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誕生の記憶
俺は…鬼と人の元に生まれた鬼と人のハーフらしい。
俺が生まれた時
母のツムギは言う。
ツムギ「椿…生まれてきてくれてありがとう。」
椿「…ありがとう…?」
ツムギ「そうよ。ありがとう。」
椿「ありがとう……。」
意味はわからない。
まだまだ私は小さくて言葉を復唱するくらいだった。
でも…何となくわかった。
胸のうちがぽかぽかしてあたたけぇ。
母上はとても優しかった。
母上といる時間は本当にしあわせだった。
そう…幸せだった。
幸せは長くは続かない。
俺には父がどんなやつか知らなかった。
俺には角があった。
外に出てはいけないと母は言う。
ツムギ「そとに出たらこわーいものがたくさんあるから絶対に出ちゃダメよ?」
椿「うん…わかった。でも母上…。私…お父さんに会いたいよ。」
ツムギ「……それはねまだ出来ないの。ごめんね…。」
母上はすごくつらそうな表情で申し訳無さそうで
俺はただ頷くしかなかった。
わかろうとして相づちをうつばかり。
椿「…そうなんだ…。」
ツムギ「ちゃんと…時がきたら話すわ。だから…待っててくれる…?」
椿「うん!私待ってる!母上だいすき!」
椿(お父さん…早く会えるといいな…。)
ツムギ「私も大好きよ。本当に心から愛してる。」
ツムギ(この子は…こんなにもいい子で…なのに…私は…いつまで…嘘をつき続ければ…いいの…だれか…助けて…。)
数年が経過し
俺と母上は父に出会ってしまう。しかし結末は残酷で理不尽で最悪だった。
父の姿は鬼だった。
大きなつのに真っ赤な瞳
大きな体。
禍々しいほどに大きな手…。
母上は俺を庇うように気を張って俺の前に立つ
母上の体は震えていた。
ツムギ「どうして…あなたが…」
父「久しぶりだなツムギ。俺を裏切るなんて…なかなか良い根性してんじゃねぇか?」
言葉が一言一言重たい。
母上は更に震えていた。
俺は察した。
……敵だ。
……やるしかない。
怖かった。
でも…それ以上に母上がこんなにも怖がっているのを
見ていられなかった。
震える母上の前に強く立つ。
椿「…おまえ!!母上から離れろ!」
ツムギ「やめなさい!椿!」
大きすぎる巨体。
圧倒的な殺意。
息を呑むのも辛く感じる。
母上が感じていたのはきっとこんなものじゃないだろう。
鬼の父は俺の姿をみてニヤける。
鬼「おまえ…俺の子か。」
椿「…しらない!…お前なんか!いいからどっかいけよ!」
鬼「くくっ…それは出来ない。こいつは俺がここで壊すからだ。」
椿「がぁっ!!!?」
俺が前に出ても余裕で突破される
その大きな手で俺の細い首を締め上げる
それを見た母上も苦し紛れに鬼の腕に掴みかかるが
びくともしない。
鬼「ほぉ…。これだけしても意識はあるみてぇだな。」
鬼は苦しむ俺を見て笑っていた。
母上も必死に抵抗する。
ツムギ「椿をはなせっ!!!はなしなさいっ!!!」
鬼「うるせぇ玩具だな…お前が俺から逃げたから壊しにきた。まぁ…まさか孕んでいるとは思わなかったがな。こいつがこうなるのは全部お前が逃げたからだ。」
更に締め付けられ
意識が飛びかけた時
母上は鬼に対して土下座をする。
椿「っ!!はは……っ…うぇ…」
ツムギ「………お願い…します…椿を放してください…。」
鬼「無理だ。こいつはここで…終わらせる。お前の目の前でな。ぎゃははははははっ!!!」
椿「”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”っっっ!!!!!」
母「つばきぃ!!!」
「は、…は、…う………え…。」
ゴキッゴキッ!!
薄れゆく意識のなかで見た。
俺が見た…光景…
母が………鬼によって嬲られ。壊され。
最後には殺されてしまった。
ああ…地獄だ。
俺は…なにも…なにも出来なかった…。
悔しい…
憎い…
憎い…
あいつが…
あいづがあああ…にぐい…
あんなにも綺麗で優しい母上が…
床に転がる肉になっているのだから…。
俺も…いっそのことそっちに…
母上…。
ごめんね…。
せっかく…せっかく…。
産んでくれたのに…。
俺は…なにも…。
出来なかった…。
椿「お…い…。」
鬼「ほぉ…もう再生したか…。」
椿「どうでも…いい。」
鬼「そうだな。」
椿「俺を…殺せよ…」
鬼「殺してやるよ。仲良く暮らすんだな。母親と一緒に。」
大きな手で頭をつかまれじわじわと
砕けていく感覚…
痛い…。
こわい…。
ああ…死にたくないな…。
母上…。
諦めかけた。
その瞬間まばゆい光が俺を包みこんだ。
だれかが私に話しかけた。
真っ白い空間に私は立っていた。
そのにいたのは…母上だった。
ツムギ「椿。」
夢でもいい。
嘘でもいい。
もう会えないと思っていた私の宝物が。
目の前にあるのだから。
思わず抱き締める。
「母上……っ…ごめん…っ…俺…なにも…なにも…出来なかった…。大好きな母上を守れなかった……。ごめんなさい…ごめんなさい!!」
母「…バカな子ね…本当にあなたは優しいわ。すごくすごく優しい。ずっと…ずっと…ありがとね…お母さん。すごく幸せだったわ。あなたを産めて本当にしあわせよ。」
椿「母…うぇ…っ……。」
ツムギ「ごめんなさい…椿。私は…逝かなきゃならないの…。」
椿「やだ!やだよ!母上!私も!私もつれていってよ!なんでだめなの!!」
ツムギ「私は…ある人にお願いしたの。だからね。つばき。」
椿「ある人…って!意味がわかんねぇよ!」
ツムギ「時期にわかるわ。貴方は私の子どもだもの。」
椿「……わかんねぇって……」
母上は強く強くわたしを抱き締めて言った。
ツムギ「つばき…一緒にいた時間がすごくしあわせだったわ!愛してる!ずっと!ずっと!お母さんにさせてくれてありがとう…。だから…生きなさい!お母さんはもぉ…おしまい!」
椿「……そんなの……そんなのっ…いやだ…母…うぇ…っ」
母上の体がだんだんと透けてゆく。
椿「…母上!?」
ツムギ「大丈夫。つばき?…私はもう…だめだけど…貴方は生きるのよ。…お母さんの分までたくさんたくさん笑って生きなさい!ずーーっと。大好きよ。愛してる。私の宝物がもっと輝くところを見守らせてね。」
そう言い残すと母上の姿はキラキラと光の粒子となり消えてゆく…。
自身の体をあたたかい光が包み込む。
???「君は幸せになる権利がある。さぁ…導きの光を君に。」
謎の声を聞いた。
光は輝きを増す。
やがて見えなくなる。
目が覚めたときそこにはなんかたくさんいて。
けものみみが生えたやつ、なんかしっぽ生えたやつ。
俺は変な奴らと出会った。
いぬこ「あなた…どこから来たの?」
椿「…わかんねぇ…いろんなことがあり過ぎて…。」
瞬間俺は視界がぼやけその場に倒れ込む。
いぬこ「ちょっ!貴方!大丈夫!?」
いぬお「おい!あんた!大丈夫か!おい!」
リューコ「……とりあえず運びましょうよ。」
こうして俺はいぬこたちと出会い
俺の運命が動き出した。
この先…再び絶望が待ち受けているとは知らずに。
次回【零却寺プロジェクト】星の欠片集
【ツキノ編】
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ツムギ (土曜日, 25 5月 2024 03:52)
この時の椿には本当になんて顔すればいいか…わからなくなるわね…
どうか…幸せにね椿。
お母さんは椿が大好きよ
鬼神椿 (土曜日, 25 5月 2024 03:56)
俺は無力でなにもできなかった…これほどになにかにイラついたのはきっとこれが初めてだったな。