システィアエピソード

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幼き力の在処


  「今回のお前には期待しているぞ」


聞き覚えのないその野太く、力強い声に違和感を覚え私は目を覚ました。

目を開けた瞬間、第一に飛び込んできたのは私よりも何十倍も大きい男の姿。

その男は自らを「神」と名乗り、私を「システィア」と呼んだ。

神は私に問いを投げかけた。


 神 「システィア、お前はシスティという存在を知っているか?」


  システィア「......システィ?」


それはどこかで聞いたことのある名前だった。

でも、それが何なのかはまったくもって思い出せない。

私が首を横に振ると、神は「やはりか....」とでも言いたげな顔で頷き、それから少しした後にゆっくりと口を開いた。


 神 「システィはお前の姉の名だ、あやつは私に反抗してな。

    少ししつけた....いや、少しだけ"痛めつけた"の方が正しいだろう。

少し手加減はしてやったつもりではあったんだが.....あやつはあっという間に死んでしまってな。

見るに無惨で、醜く、ぐちゃぐちゃの状態で死んだ。

もう生き返る事もなかろうと思っていたんだが......この世にも不思議な事があるものだな。

あやつは姿を変えて戻ってきたんだ、自らを「天魔神」と名乗ってな。

まぁ.....いくらどんな力を手にしたとしても....私には到底叶わん様だがな!あっはっはっはっは!!!!!」


  システィア「.......!!!!!!!」


この時、私の中で何かがプツンと切れた。

体が熱くなり、何かがせりあがってくるのを感じ、私は手をギュッと握った。


 神 「......ふぅ、さてシスティア。本題に入らせてもらおう。

 お前を生み出した理由はたった1つだ。"システィを殺してこい"」


  システィア「黙りやがれです」


私がそう言った瞬間、神は無様な呆けた顔で私の顔を何度も何度も見返した。


 システィア 「いくら見放されても、勝てないと分かっていても、困難に立ち向かう勇敢な人を殺すなど間違っています。

殺されるべきなのは、自分で作り上げた物を道具としてしか見

ず自分に都合が悪いと感じたら問答無用で破壊しつくし嘲笑う。そんな人なのではありませんか?」


神「貴様....ッ!!!神を目の前にしてなんと無礼な態度を...!!」


  システィア「何故そんなに怒っているのですか?私は真実を言ったまでなのです」


  神「おのれ....小癪な....!!!」


神の額から青筋が浮かぶ。

その怒りに満ちた表情を見て、私は不敵にニヤついて見せた。すると神の顔はみるみる赤くなり、遂には武器までも手にし始めた。


 神 「次から次へと生意気な態度をしよって....その腐り果てた生意気な根性、今ここで叩き直してくれようではないか!!!!」


神は手にした武器を私の目の前に突き立て、睨みつけながらそう叫んだ。


しかし、私は怯むことなく冷静に答えた。


システィア「貴方こそ何度同じことをすれば気が済むのです?ただ忘れっぽいだけなのか、それとも馬鹿なのか。どちらにせよ、愚かである事に変わりはないですね」


神「貴様ァアアアッ!!!」


小さい子供のように暴れ狂う神に私はため息をつく。

そして、私はまた挑発するように微笑んで見せる。

すると、神の怒りは頂点に達してしまったようで、そのまま勢いよく私に向かって突進してきた。

私は避けようとせず、ただその場でジッとしていた。

今思えば、私は明らかに神を舐め腐っていた。

確かに自分に力はある、それでも神と同等に並んでいるという訳でもなければ上に立っているという訳でもない。

神と私なら、圧倒的に神の方が力を誇っている訳で私の力程度じゃ全く歯が立たないのだ。

しかしこの時の私は、そんな事を微塵も考えていなかった。


そんな事を思い返していた頃、過去の私は震える手で自ら武器を握り着々と近づく神の目を見つめていた。

狙う矛先は彼の心臓、心臓を貫けばきっと神だって死ぬ。

いくら死ななかったとしても、まともに戦えはしなくなるはず。

そこにとどめを刺して、システィの....いや、ねえ様の仇を討つのだ。

そう心に決めて、私は神に武器を振り落とした。


  システィア「はぁあああああああああ!!!!!」


それと同時に神は地面に向かって武器を突き指す。

周りには力強い轟音が鳴り響き、気付くと私は風圧で吹き飛ばされていた。

不思議と恐怖は感じず、これも運命だったのだろうと死すらも覚悟した。

その時だ。

────ガコンッ

  (ガコン.....?)

重みのある鉄のような音に、違和感を覚えた私は少し恐怖を覚えながらも音のした方へと視線を移す。


システィア  「───え?」


そこにあったのは、中途半端に開いた不気味な外見をした奇妙な扉とどこまで続いているのかさっぱり分からない黒い空間穴。

扉に背を向け、得体の知れない黒い穴へと落ちていく私の体。

私の身に起きている状況を理解するのには、かなりの時間がかかった。


システィア  「.....あ.....いや....たすけ.....!!!!きゃぁあああああああ!!!!」


状況を把握し尽くした時にはもう時既に遅し、周りに手をかけられるような場所はなくただ体が地につくのを待つ事を余儀なく強いられていたのだった。


  ???「おーい、起きろー」


システィア  「う....ん......あとごふん......」


 ??? 「おーきーろー!!」


  システィア「んぃ.....なんですかぁ......?」


目を擦って、重たい瞼を開ける。

ぼやける視界のその先には、見覚えのない不思議な雰囲気を纏った男が頬杖をついてしゃがむ姿があった。


  システィア「だ......誰ですか....」


突如目の前に現れた謎の男に、私は精一杯の警戒の眼差しを向けた。


星のおじさん  「おー、怖い怖い....まぁ、そんなに警戒しないでおくれよ。私はただの通りすがりの星のおじさん、なーんにも怪しくない紳士なおじさんさ。」


  システィア「.......なんだか胡散臭いのです」


星のおじさん  「失敬な....まぁいいさ、さて私が君を起こしたのには理由がある。それがなにか分かるかい?」


そう言うと男は立ち上がり、私の顔の前で人差し指を立てる。そして、不敵な笑みを浮かべながらこう言った。


 星のおじさん 「君には幸せになる権利がある」


システィア  「胡散臭さが増した気がするのです」


 星のおじさん 「えぇっ?!!嘘ぉ?!!」


男は少し慌てた様子で私の肩を掴む。

しかし、すぐに落ち着きを取り戻してコホンと咳払いをして話を続けた。


   星のおじさん「まぁ、それは置いといて.....さっきも言った通り君には幸せになる権利があるんだ。そうだな.....もし姉に会えると言ったらどうだろうか」


  システィア「....!!ねぇ様に.....ねぇ様に会えるのですか?!」


  星のおじさん「あぁ会えるともさ。しかしだ、それには私のお願いを聞いてもらわなければいけないんだ」


システィア  「聞きます!!なんでも....とまではいかないけど....出来る範囲でなら!!!」


星のおじさん   「オーケー、それじゃあお願いを聞いてもらおう」

そういうと男は私の目の前にしゃがみ、目線を合わせてくる。

そして、少し微笑みこう告げた。


 星のおじさん 「この世界から少し離れたところにとある小さな世界がある、君にはその世界の特異点である「黒上いぬこ」と会ってほしい。彼女はとても親しみやすいから、君ならきっとすぐに仲良くなれるはずだ。それと彼女の特徴は黒髪のケモ耳娘だ、いいね?」


 システィア 「は....はい!」


私がそう答えると、男は優しく微笑み私の頭を軽く撫でた。


星のおじさん  「それじゃあ、行っておいで。黒上いぬこの世界へ。」


  システィア「......おじさん」


  星のおじさん「.......?」


  システィア「いってきます」


  星のおじさん「.......いってらっしゃい、"システィア"」


私は背中を押され、白い空間へと落ちていく。

しかし、なぜだろう。

さっきのような恐怖心が全くもってない。

むしろ.....少し楽しみだとも思えてきた。

黒上いぬこってどんな子なんだろう、仲良くなれるかな。

ねぇ様はどこにいるのかな、どんな人なのかな。

そんな事を考えながら、私は黒上いぬこの世界へ落ちて行った。


  システィア「キャッ!」


突然の衝撃に思わず声が出てしまう。

周りには見たこともない景色が広がっており、まるでそこは白昼夢のような空間だった。

そしてその空間には私にそっくりなクリーム色の髪の女の人とおじさんが言っていた黒髪のケモ耳の女の子がこちらを心配そうに見つめていた。

.......この人達が、ねぇ様と黒上いぬこ.....?

 

システィア 「あなた大丈夫?!!急に落っこちてきたように見えたけど.....」


ねぇ様らしき女の人が手を差し伸べる。

私がその手をとると、心の奥が急激に熱くなると同時に心臓が大きく跳ね上がった。

これがどういう感情なのかは分からないけれど、きっと素敵なものなのだろうと確信した。


  システィ「ちょっ?!!顔赤いわよ?!!熱?!!」


  システィア「へぁえ?!!大丈夫です!!元気100倍ですから!!!」


  いぬこ「......フフッ」


するといぬこが小さく笑う。

よく見ると、ねぇ様も私と同じ顔をしているようだった。


いぬこ  「二人とも、出会ったばっかりなのにすっごく仲良しだね。まるで.....姉妹みたい。見た目もそっくりだし、すごく仲良しだし。もしかしたら本当に姉妹なのかな?なーんてね」


いぬこにそう言われた途端、私達は揃って図星をつかれた顔をした。

それも意図的ではなく無意識の内に。

私達は顔を見合せ、そして笑った。

あぁ、私は今幸せなんだなぁって。

ねぇ様と会えて、一緒にいられて、笑いあえてる。

私はこんなに幸せでいいのだろうか。

でも、いいよね……だって……私とねぇ様はずっと一緒なんだもん。


いぬこ  「そうだ!!この前ね、マカロン作ったんだ!よかったらうちに食べに来ない?ここではなんだし私の家で色々お話聞かせてよ!」


 システィア 「.....!!はいっ!」


私はいぬことねぇ様に手を引っ張られながら、走り出す。


  いぬこ「そういえば自己紹介してなかったね、私は黒上いぬこ!こっちの子はシスティ!貴女の名前はなんて言うの?」


 システィア  「私は........"システィア"です!」


こうして私は黒上いぬことシスティことねぇ様との出会いを果たしたのだった。

(完)


次回【零却寺プロジェクト】星の欠片集


【カラス編】


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コメント: 1
  • #1

    システィア (土曜日, 25 5月 2024 23:06)

    はぁ…やっと会えました!姉様!これからは楽しいがたくさんですよ!姉様に危険が及ぶことなんてこの先絶対にありません!任せてください!私は最強ですから!