ツキノ記憶接続ルナル・ムーンファクトエピソード

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-名家の兎の記憶-



ボクの家は名家だったらしい。


ボクはこの家の跡継ぎになるつもりだった。



けど


ボクには適正がなかった。


お父さんはそんなボクに絶望した。



いろんなことを学ばせようとあれやこれやとボクにやらせた。



ボクはお父さんに褒められたくてがんばった。


頑張っていた。


でも…どれだけやってもどれだけ頑張ってもいい結果はだせなかった。



お父さんはそんなボクを殴った。



その時の父の顔は化け物だった。


ボクは…怖かった。



痛い…痛い…。



顔が…じんじんと腫れて青あざがつく。



学校という施設にいかせられる。


そこでいろんな仲間たちがにこにこ過ごしている。


ボクはただ一人窓際の席。



空を眺める。



死んでしまいたい。



なんで…褒めてくれないんだろう。


なんで…ボクはうまくできないのかな。



ボクが男の子だったらうまくできたのかな…。



ただ時間が流れて。


ある時。


学校の帰り道


クラスメイトとに絡まれた。


ボクに友達というのができた。


友達はにこにことわらってボクに話す。


ボクはこのとき笑えなかった。


愛想が悪い。


そうおもわれても仕方ない。


そのクラスメイトの人たちはお前暗い顔しすぎ元気だせよと肩をバシッとたたく。


お父さんにたたかれたところと同じ場所だったから。


かなり痛かった。


思わずボクは声にだしてしまう。



ツキノ「いっ!たぁ!!」



クラスメイトはケラケラと笑う。



きっと悪意はないんだろうな。


わかってるんだけど…。


なんでかな…。


その笑い方は…


ボクを殴ってるお父さんの顔にそっくりだ。



クラスメイトの女子「ごめんごめん…痛かった?」



ツキノ「いや…平気だよ」



クラスメイトの女子「いまからあーしらカラオケいくんだけど…一緒にいかない?」



ツキノ「カラオケ…?」



クラスメイトの女子「カラオケ知らないの?…さすがお嬢様だね。」



ツキノ「君たち…なにが目的なの…。お金?」



クラスメイト「あーしらは楽しいことを追及してるだけ。」



ツキノ「…………。」


いやな予感がする。


逃げないと。



ボクは彼女たちの手を振り払い逃げたが…。


このまま家に帰ってどうするんだろ…。


お父さんには暴力でわからされる。



あれ…ボクの居場所って…。



クラスメイトの女子「おい!待てって!言ってんだろ!」



ドンッ!



背後から強い衝撃と共にボクは、気を失った。



ツキノ「……………。」


何処だ…。



気がつけば両手両足を縛られ身動きが取れない。


ボクは彼女たちに捕まった。



ツキノ「ボクがあなた達になにかしたんですか?」



問を投げても無視され一方的な暴力の嵐。


制服はビリビリに体のあちこちがアザだらけ。



彼女たちの顔は笑っていた。



記憶はここで途切れている。



この記憶もいつのだろう…。



ツキノ「……ごめんなさい…。」



父「…お前は一体なんだ?」



ツキノ「……私は…いや…ボクは、この家の…」



父「ちがう。お前は出来損ないだ。」



ツキノ「ボクだって!本気で…」



父「…ツキノ。お前にはもう…ガッカリだ。」



ツキノ「そんな!父上!」



父「お前に、私の名を呼ぶ権利すら無い!お前はこの家の恥だ!!」



ツキノ「…なんで…そこまで…。意味がわからないですよ…。」



父「……わからないだろうな。お前には一生。」



ツキノ「……たしかにボクは…女です。けれど…ボクだって!必死に努力して…努力して!父上に認められようと!頑張ったんです!なんでわかってくれないんですか!なんで!話すら理解してもらえないのですか!ねぇ!どうしてですか!!!父上!!!」



父「結果が全てだ。」



ツキノ「……っ…」



父「お前はもう…邪魔だ。」



ボクはその日、


家を追い出された。



ツキノ「……ボクは…これから…どうすれば…。」



途方に暮れて街を歩く。


行く宛もなく彷徨い続ける。



ツキノ「…………。」



そして…やつらに出会ってしまう。



ここから…ボクの死が始まったんだ。




【全てを持っていた兎の記憶】-ルナル視点-





俺には全てにおいて才能があった。



父「おお!素晴らしい!よくやったぞ!ルナル!お前こそ私の誇りだ!」



父はたいそう喜んだ。



ルナル「ありがとうございます!父上!」



心の底から嬉しかった。


俺が何かを成すことでそれがこの家の評価に繋がり皆が笑顔になっていく。


でも…1人、そんな俺を見て悲しい目をしているやつがいた。


そいつは得体のしれない仮面を被っていた。


気になった俺は…そいつに話しかける。



ルナル「おい!お前。俺の部屋に後で来い。話がある。」



仮面の者「………はい。かしこまりました。」



部屋でそいつを待っていると、コンコンっとノックをする音に反応する。



ルナル「入れ。」



仮面の者「エルトラス、お呼びいただき参上しました。」



ルナル「…エルトラス。先程のなぜ悲しそうにしていたんだ。」



エルトラス「……ルナル様。貴方には姉がいました。」



ルナル「…………。なんだと…?」


(俺に…姉…だと…。)



エルトラス「事実です。」



ルナル「…………。それが関係しているんだな?」



エルトラス「…はい。」



ルナル「詳しく話を聞かせろ。」



その後話を聞くととんでもないことがわかった。



数十年前に俺の姉はこの家を追放されたらしい。


姉の名前はツキノ。


姉の召使いだったエルトラスはその姿をずっと見ていた。


父上は後継者をツキノに期待していた。


しかし結果はどれも酷いものだった。


父上は姉を見限り捨てて、更には、殺したという。


エルトラスはそれを知った後に父上に刃向かった。


父上には敵わず、優秀だったエルトラスは刃向かった罰として顔を酷いものにされたらしい。



エルトラス「…私は…ルナル様を見るたびに…自身が仕えていた、ツキノお嬢様の顔がチラついて…」



エルトラスは仮面を…外す。


エルトラスは…女性だった。


顔は酷く顔は見れたほどではない痛々しいものだった。



エルトラス「………本来…この顔のキズは私自身の罪の証でもあります…。私が側にいながらあの方の本心にちゃんと…寄り添ってあげていれば…。」



初対面の者を…信じようなんて…思わない。


けど…この瞳、嘘じゃない。


真意にこの人は、俺の姉を…支えようとしていた。


俺は…愚か者だ。


もっと早く気付いてやるべきだった。


上に立つにはまだまだだったようだ。


そして…何よりも…。


この件を父上は俺に隠蔽していた。



ルナル「……………。エルトラスと…言ったか…すまなかった。」



エルトラス「…ルナル様…」



ルナル「…でも…まずは証拠だ。証明できるモノはあるのか?」



エルトラス「……もちろんです。」



ルナル「…よし。お前はこれから俺の召使いに任命する。決定だ。」



エルトラス「…ルナル様…。」



ルナル「…俺も…言わなきゃ収まらないもんが無いわけじゃないからな。」



エルトラスの証言により俺は…追放されたとされる姉の情報を…あらゆる手を使って調べた。



ルナル「…ここか。」



姉さんに手を加え殺したとされる女どもに接触することに成功する。


奴らを釣るのは簡単だった。



ルナル「初めまして。ルナルといいます。」



アルラ「初めまして…」



エキナ「やっば。めっちゃ…すき…」



ケルン「あ、あの…私達に話があるって?」



ルナル「まぁ…先に好きなの頼みなよ。」



エルトラスは事前に奴らの好みを把握、レストランを俺は貸し切りにする。



アルラ「いいんですか!」



エキナ「…やばい!好きすぎる!」



ケルン「…興奮しすぎ。」



それぞれは興奮しながらも飲み物を頼み、予め全種類に睡眠薬を投与してある。


ものの数秒。


女どもは眠りについた。


レストランを後にエルトラスと一緒に女たちを俺の別荘に運ぶ。


あまりにも心地よく眠っているので、少しばかり手荒に起こした。


起こし方は簡単。


熱湯だ。



ぴしゃあ!



女たちは悲鳴を上げて目を開ける。


辺りを見回しては、きゃあきゃあと泣くので、



パンッ!



銃声を鳴らす。



ルナル「…おはよう。ゲス共。」



アルラ「…何なのよ!あんた!」



エキナ「…痛い…熱い…」



ケルン「………っ…」



ルナル「…今から質問をする。答えなければ…殺していく。」



アルラ「…こんな事…許されると思ってんのかよ!クソが!」



パンッ!



アルラ「あああああああっ!!!」



俺は威勢のいい女の右手に向けて発泡する。



アルラ「手がっ!血がぁ!!!」



他の女はそれを見た途端に青ざめて大人しくなる。



ルナル「…お前らさ?昔に俺とよく似た女の子金属バットで殺した事って…ない?」



ケルン「……まさか……あの…」



ルナル「…ん?お前、なんか覚えてるの?」



ケルン「…し、し、しらなっ!」



パンッ!!!



ルナル「嘘つかないでくれる?」



ケルン「いやあああっ!!!」



エキナ「ケルン…ぁ…あ…」



ルナル「じゃあ…最後、君。」



エキナ「………は、はぃ…っ」



スチャ…


俺は…その女の頭に銃口を向ける。



エキナ「こ、殺さないで…お願いします…」



ルナル「それは…今から言う俺の質問に嘘!偽り無く答えられたらね。」



エキナ「はい!!答えます!答えますから!」



ルナル「…じゃあ…ツキノって名前に覚え…ある?」



エキナ「………っ…あ、…あります…。」



ルナル「どうゆう関係…だったのかな?」



エキナ「……わ、わたし…たち…」



スチャ…



ルナル「私達?」



エキナ「…ひっ…わ、私達3人で!イジメてました!!」



ルナル「…へぇ…。そうなんだ。それで、なんでイジメたの?」



エキナ「……お、面白かったから…で、です。」



ルナル「…そっか。どんないじめ方…したの?」



カラカラカラ…



エキナ「…………。盗みに行かせたり…皆で…蹴りまくったり…最後は…」



カラカラ…



エルトラス「お持ちしました。」



ルナル「ありがとう。で?…これで…殺したの?」



俺が持っているのは金属バット。



エキナ「………あ、あ…はは…。」



ルナル「…これは…自分たちの意思でしたの?」



エキナ「…ち、ちがう!私達は!!」



アルラ「エキナ!言うな!!」



エキナ「…私達は…ツキノさんの…お父さんに!!」



ルナル「………わかった。」



エキナ「じゃぁ…私は…たすけ…」



ルナル「お前達は…どちらにしても殺す。」



ケルン「まってくれ!…私は…私には!家族が!」



ルナル「…嘘つき。エルトラス。」



エルトラス「…はい。ルナル様。」



エルトラスは懐から女達の情報全てが載っている紙を見せびらかす。



ケルン「………あっ…ああ…なんで…。」



ルナル「…嘘つきには…死を。」



アルラ「…あんた!一体何なんだよ!こんな事してただで済む…」



ルナル「わかってる。だから君たちの死も背負って生きていくよ。」



カラカラカラカラ…



アルラ「待って…冗談だろ!なぁ!」



ルナル「…冗談だといいね。」



アルラ「………やめっ」



グチャ!!!



アルラ「あああああああああああ!!!」



ルナル「どう?金属バットで砕かれるの?」



バキッ!ゴキッ!



アルラ「あああっ!ああああっ!足が!足があああ!!」



ルナル「…その痛みに耐えてたんだ。姉さんは。」



アルラ「…まさか…お前…あいつの…」



ルナル「…弟だよ。」



グチャ!!!



その後3人の足を砕いた後こいつらを屋敷に運んで父の前に見せる。



ドサッ…



ルナル「…父上。こいつらのこと知ってますか?」



アルラ「……あ…ぁ…」



父「知らないな。それよりなんだ?ルナルこの汚れた者共は。」



父上は平然とした表情で言い放つ。



アルラ「…おい!じじい!ふざけんな!てめぇのせいでこんな事にあたし等なってんだ!責任取れよ!ツキノを殺したら金を渡す、警察にも話を通すって言ったのはてめぇだろうが!」



父「…なんのことかな?」



ルナル「………。」



エキナ「ふざけんな!お前のせいで!こんな…」



父「ライトニング」



バリバリバリ!!



ルナル「範囲確定シールド。」



瞬時にその攻撃は跳ね返される。



父「…なぜ止める。」


(ほぉ…止めたか…)



ルナル「そいつ等は証拠材料だ。」



父「…なるほどな。」


(ここらが潮時のようだ。)



ルナル「これで…はっきりした。…あんたの背中を追い続けた俺が馬鹿だったってことにだ。」



父「いやいや…実に茶番だ。」



ルナル「…なぜ…黙っていたのですか?」



父「…お前を育てるうえで必要ではなかったからだ。」



ルナル「…そうだろうな。あんたは昔からそうだよな。真に俺を見てなかった。見ていたのは才能だ。中身じゃない。俺の力だ。俺はアンタの言う通りにしてきたでもそれは、みんなのためになるからだと…そう思ったからだ。」



父「実際になっているであろう?」



ルナル「お前の愉悦のために俺の家族は殺されたのかと思うと今すぐにでもお前を八つ裂きにしたいところだ。」



父「はっはっは!やってみろ。お前ももう充分に役に立ってくれた。そろそろ駒の入れ替えが必要と思っていたんだ。」



ルナル「……そうか。なら…お前のこの偽りの記憶と共にこの世から消してやる。」



父との戦いが始まった。



【欠落した欠片の記憶】-ツキノ、エルトラス視点-



カメラでボクの写真を撮り


脅された。



これからよろしくね。



満面の笑みだ。



暴力を振るう彼女たちの顔はとても幸せそうだ。



そんなに楽しいのかな…。



ボクは真似できない。



そんなの痛いだけじゃないか。


傷つけるだけじゃないか…。



ボクはぼろぼろになった制服で家に帰る。


エルトラスはボクの姿をみて



エルトラス「ツキノお嬢様!どうしたのですか!」



ツキノ「友達とケンカしちゃったんですよ。」



と答えた。



エルトラス目に涙を浮かべはただ優しくボクを…抱きしめてくれた。



ツキノ「この世界は生きづらいですね…。」



エルトラス「…私に…力さえあれば…」



ツキノ「…大丈夫です。それに貴方はもう充分にボクを…助けてくれています。大丈夫です。」



エルトラス「…ツキノお嬢様…。」



ツキノ「それに…きっともうすぐ終わりますから。安心してください。」



私は…お嬢様のその言葉を信じて待っていた。


でも…いくら待ってもお嬢様は帰ってくることは無かった。


私は必死でお嬢様を探しついに見つけたと思ったら、お嬢様に振り下ろされる金属バット。


もう手遅れだった。



エルトラス「……お…お嬢…様…っ…。」



真っ赤に染まっていく地面


ケラケラと笑う三人組…それぞれが貴族令嬢だった。


ここで…ある言葉がフラッシュバックする。



ツキノ「それに…きっともうすぐ終わりますから。安心してください。」



エルトラス「…そうゆう……こと…だったのですね…っ…」



ケラケラと笑いながら走り去っていく三人組。


憎い…憎い…憎くて…今飛びかかってでも殺してやりたかった。


きっと…来てしまえばその貴族にちょっかいを出したとして処刑されてしまうだろう…。



エルトラス「必ず…復讐します。絶対に…このエルトラッ…」



ドカッ!!!



背後から音もなく鈍器で頭部を殴られた。


あまりの衝撃に目の前が…真っ暗になる。



エルトラス「……お、お嬢様…っ…」



私の視界は闇に落ちた。



エルトラス「…っ…私は…っ…」



頭が痛い…



?「おきろ」



何処かで聞いた声…


忌々しい憎むべき声。


そいつの名は…ツキノお嬢様の実の父親。



エルトラス「ガー…ディア…・ムーン…ファクト…っ…なんで…お前が…っ…」



ガーディア「お前はまだ使える。」



エルトラス「…ふざけるな…っ…私が仕えるのは…ツキノお嬢様…たった1人…です。」



ガーディア「ああ…死んだそうじゃないか?あの出来損ない。」



エルトラス「………っ…」



ガーディア「最期は…頭が弾けたらしいな。」



エルトラス「…ガー…ディア…貴様…なのか…?」



ガーディア「…さぁ?知らんなぁ…?」



エルトラス「…貴様ああああああっ!!!!」



私は気がつけばガーディアに飛びかかっていた。



ガーディア「不敬である。」



その言葉と共に頭上が光り輝くとソレは私を撃ち抜く。



ゴロゴロ…ピキャアアアンッ!!!


ビリビリ!バチチチッ!!!



エルトラス「ああああああっ!!!」



ガーディア「手加減があまり出来ぬゆえ殺しかねない勢いだ。くくく…どうだ?私の力は?」



エルトラス「………っ……。」


(なんて…威力…。瞬間的に防御をとったけど…少しでも遅れていたら…死んでいた。)



ガーディア「……なんだつまらないな。ま、これで理解したであろう?お前は…いつでも殺せる。お前は私の言う事を聞くしかないのだ。」



エルトラス「…………ふざけるな…っ…お前なんかに…っ屈するくらいなら…死んで…」



-???回想-



ツキノ「…エルトラスは…やりたいことないの?」



エルトラス「…得にはありません…。」



ツキノ「…そうですか。それは残念です。」



エルトラス「…ツキノお嬢様は何かやりたいことあるんですか?」



ツキノ「…ボクはね、このムーンファクト家をもっとすごくして父上、母上に褒めてもらってこの世界で困ってる人を助けられるすごい人になる!…つまり!かっこいい!ヒーローになりたい!」



エルトラス「…それは…夢、何じゃないですか?」



ツキノ「…あー…まぁ!細かいことはいいじゃないですか!」



エルトラス「……その夢が叶うように、私も全力でお手伝いします。」



ツキノ「……だーめ!これはボクがしたいこと!夢!なんだから!」



エルトラス「…なら、私のやりたいことはツキノお嬢様を助けることです。それなら問題ないでしょう?」



ツキノ「…えー…。」



エルトラス「決定ですね。」



ツキノ「…じゃあ…ボクは、君の支えるに値するすごい偉人になってお返しするよ!」



-エルトラス視点-



エルトラス「…お嬢様は…貴方のために…頑張っていました…。なのに……っ…お前は…ただ結果が全てだと…利益にならなければ切り捨て…そして最後には…」



ガーディア「いいや…役に立ったさ」



エルトラス「…なんだと…。」



ガーディア「私の玩具として最高のエンターテイナーだった。アイツには元々なにも期待していない。」



エルトラス「…最初から…切り捨てるつもりだったのか…お前は…あの方の想いを…最初から…。」



ガーディア「実に滑稽だった。」



エルトラス「……っ…ぐっ…ぅ…ううぅっ!!!」



ガーディア「…私が許せないか!?がっはっはっは!!!」



エルトラス「っ殺してやる!!殺してやる!!」



ガーディア「…無駄だ。お前では勝てない。不可能だ。」



エルトラス「タダでは死んでやらない!絶対に…お前をっ!!!」



ガーディア「マインドリセット」



ガーディアがその言葉を告げる



エルトラス「……………。」



私は全身の力が抜けその場に倒れてしまう。



ガーディア「…お前はエルトラス。私の玩具、いいや…奴隷だ。」



エルトラス「…はい。ガーディア…様…。」



それから長い間、私は傀儡のようにガーディアに好き放題された。


拷問、夜の相手など酷いものだった。


私が記憶を取り戻せた理由は…以前仕えていた際に日記を記していた。


それが掃除をしている際に見つかった。


記憶を取り戻した時にはまたガーディアに記憶を部分的に消されてしまった。


覚えていることだけを何度も何度も日記に記して繰り返した。


そして…ムーンファクト家に1人の子どもが生まれた。


名前はルナル・ムーンファクト。


ムーンファクト家の後継ぎ。


私の実の子どもであり、ツキノお嬢様の腹違いの姉弟だ。



-ルナル・ムーンファクト-



ガーディア「ルナル…お前には本当に残念だ。」



ルナル「残念なのはお前だ。ガーディア。もはや…アンタを父上と呼ぶ必要はない。この手で終わらせる。」



ガーディア「…くく…あっはっはっは!私の能力で操られていた傀儡風情が!何ができる?この私を終わらせる!?…やってみるがいい。」



ルナル「そうか…。なら…こうすればいい。」



俺が先行でスタートを切る。


ガーディアとの距離はさほどない。



ガーディア「っ!?」



ルナル「おい…何を呑気に玉座で踏ん反り返ってるんだ?」



渾身の一撃。


ガーディアの顔面目掛けて拳を打つ。



ガーディア「…い、いつの間に!?ぐあああああ!!!」



ルナル「…どうした。のた打ち回る暇なんてないぞ…。」



ガーディア「くっ…マインドリセット!!!」



ルナル「……無駄だ。」



ガーディア「…まさかお前…この力の弱点を…」



ルナル「……ああ…。」



俺は事前に視界を無くし耳には耳栓をして迫っていた。



ガーディア「…馬鹿な…気配だけで…認識しているだと…!?」



ルナル「…会話なんて必要ないよな。ただひたすらに…これからお前は…サンドバックだ。」



ガーディア「…くっ!!小癪なああああ!!!」



ルナル「…………。俺にさせていた事が仇となったな。」



ガーディア「ライトニング!!!」



ルナル「模倣確定ライトニング」



光の速さで放たれる一撃一撃はルナル目掛けて放たれるがルナルに全く当たらない。


それもそのはず…ルナルは気配察知がずば抜けているのだ。


視界がなくなっても聴力がなくなっても行動出来るように子供の頃から鍛えられていた。



ガーディア「ライトニング!ライトニング!」



バチン!


バチチチッ!!


バチン!バチン!



ルナル「…終わりだ。ガーディア。」



ルナルは呼吸を整え随分と距離が離れたガーディアに向かって走る。



ルナル「……神速…。」



全てがスローモーションに動く世界。


ガーディアの懐に入る。



ルナル「羅火兎怒流星拳」(ラビットメテオブロー)



ありったけの怒りを拳に込めガーディアに向けて放つ。



ドドドドドドドッ!!!


ドドドドドドドッ!!!


ドドドドドドドッ!!!



ガーディア「っっっ!?がっ…ぁっ!!!



そこからは一方的な暴力。


有無を言わせない圧倒的な力技。


殴る、殴る、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る…



ドサッ…



ガーディア「…………っ」



ルナル「……もし俺が死んだらあの世でも…殺してやるよ。殺して殺して殺し続けてやる。俺は…エルトラス…母さんを泣かせたアンタを姉さんを殺したアンタを…絶対に…許さない。絶対に…だ。謝罪なんてものはいらない…。」



ガーディア「…エルト…ラス…か…ひひっ」



ルナル「…何がおかしい…」


(なんて…生命力だ…こいつ…)



ガーディア「最高の…エンターテイナーだろ?」



ルナル「…………。」



ガーディア「あいつはエルトラスは実の息子であるお前の事すらあやふやだ。そしてお前のその記憶も…」



ルナル「黙れ……。」



ドカッ!!!



ガーディア「ぐっふ…ひっ…ひひ…いい顔だ」



ルナル「ガーディア。…お前がしたことは許されない。けどな…俺は…お前の近くにいながら気付けなかった。俺に残るこの記憶は…偽りだったのかもしれないが俺をここまで育っててくれたのはお前とここにいるムーンファクト家の皆だった。感謝…する。ありがとう。」



ガーディア「…………。」



エルトラス「………。ガーディア。」



ルナル「…エルトラス。」



ガーディア「…なんのようだ。」



エルトラス「…私はあなたが憎くて仕方なかった。」



ガーディア「…そうだろうな。今にでも殺したいだろう。」



エルトラス「ええ。殺したい。けど…あなたを殺しても…あの方は帰ってこない。だから…償ってください。」



ガーディア「愚かな。…じゃあ…共に死ぬがいい。」



瞬間、ガーディアが光り輝くと膨れ上がり爆発する。


エルトラスは咄嗟にルナルを勢いよく突き飛ばした。



エルトラス「ごめんね…」



ルナル「エルトラス!!!…ぐあっ!!」



爆風に吹き飛ばされ壁に強く叩きつけられ


気を失ってしまった。


しばらくして目が覚めると


壊滅的なムーンファクト家がそこには広がっていた。



ルナル「…………。うそだろ…」



俺は我に返るとエルトラスを探した。



ルナル「…エルトラス!!!どこだ!!!」



何度呼んでも返事はない。


あの爆発で木っ端微塵…なんて考えたくない。


俺は…もう誰も…失いたくない。


それなのに…。



ルナル「エルトラス!!!どこだ!!!エルトラス!!!!………っ!!?」



頭が割れるように痛い…



ルナル「…っ…ぐぅ……っぁああああ!!!?」



消えた…記憶が元にもどっ…



ルナル「………。」



ガーディアが死んだことにより能力の効力が消滅


記憶の復元が始まった。



−−−−−−



ルナル「………お母さん…。」



エルトラス「……あの人との…子ども…子ども…か。」



ルナル「…お母さん…。」



エルトラス「…なんでも無いですよ。貴方はただ生まれてきてしまっただけで何も悪くない。」



安心させるように


お母さんは俺の頭を撫でてくれた。



−−−−−−



ザザッ…



画面が切り替わるように


映し出されていく


記憶の欠片



−−−−−−



エルトラス「…私は反対です!貴方はまた!」



ドス…



ガーディア「つくづく懲りない女だ。どうやって記憶を…」



エルトラス「…っ…私には貴方のその能力に耐性がついたんじゃない?」



ガーディア「…ふ…かもしれないな。まぁなら…ちょっとした実験だ。何度でも何度でも…繰り返し消して上書きしていけばいい。」



エルトラス「…っく…ああああああああああああ!!!」



ルナル「お母さん!!!」



エルトラス「…るな…る………」



ドサッ…



お母さんはその場に倒れ物陰で見ていた俺はガーディアに飛びかかる。


勿論…力の差は圧倒的不利。



ガーディア「…物陰でじっと見ていればよかったものを。愚かな。」



ルナル「…がっ!?………」



ガーディア「マインドリセット」



ルナル「ぐっああああああああああああ!!!」



俺もガーディアの能力により記憶が断片的に消されていた。



忘れちゃいけなかった。



−−−−−



エルトラス「………。」


(あ…ぁ…ルナル…。私の…息子…。)



ルナル「お母さん!!!どこだ!!!ごめん!!!俺は…お母さんを…忘れてしまっていたんだ!!!ごめん!!!ごめんなさい!!!お母さん!!!」



エルトラス「………。」


(聞こえてる…でも…身体の感覚が…無い…)



それもそのはず爆発の衝撃で半身が吹き飛んでいる。


意識があるのが不思議なくらいだった。



ルナル「ごめん…本当に…気がつくのが遅くて…ごめん!!!」



エルトラス「…………。」


(今のルナルはきっと正気じゃない…出来るはずの気配感知が乱れてる…。)



ルナル「…お母さん!!ねぇ!お母さん!!返事してくれよ!!」



エルトラス「………。」


(困った…こどもね…本来なら…もっと甘やかして普通の愛情を注いであげられたのに…ごめんね…。仕方ないから…これが最期のお別れ。きっともう私は助からない。だから…)



キュピーン…



瓦礫からかすかに光る合図


それをルナルは見逃さなかった。



ルナル「そこか!!」



一目散に駆け寄り瓦礫を容易に退かす。



エルトラス「………。」


(まぶしい…ルナルの顔が見えない…。)



ルナル「お母さん!!!」



エルトラス「………る…なる…っ」



ルナル「お母…っ…さん…。」



ルナルはエルトラスの姿を見て言葉を失いかける。



ルナル「……ごめん…。」



エルトラス「……だい…じょう…ぶ…」



ルナル「………無理を…しないでくれ…俺は…!!何も…出来なかった!!俺が生まれてこなければ!お母さんはこんな最期を…」



エルトラス「…ばか…な子。あなたが生まれてきたから私は今…こうして…記憶を…取り戻せて…大好きな貴方に胸に身体を預けて抱きしめてもらいながら…逝ける。最高の…死に様。」



ルナル「……お母さん……っ…」



エルトラス「……私との思い出は…少ないかもしれない…けどね…一つだけ…思い出せたことがあるの……聞いて…。」



ルナル「……なに…。」



エルトラス「…ツキノお嬢様の遺体は無かった。ガーディアにも詳細はわからなかった…ツキノお嬢様は…生きている…かもしれない。っが…」



ルナル「お母さん!!!」



激しく吐血しエルトラスの意識が消えかけていた。



エルトラス「…ルナル…貴方の家族はちゃんと生きている…だから…探して。」



ルナル「………。家族…。」



エルトラス「…そうよ…きっと。生きてるはずだから…見つけてあげて…」



ルナル「……わかった。絶対に…見つけ出す…。」



エルトラス「……あの方…は…寂しがり屋で…優しくて…努力家で…お茶めで…素敵な方だから。きっと…ルナルも好きに…なる。」



ルナル「………すこし…妬いちゃうかも…な。」



エルトラス「…あらら…最期に笑わせないで…」



ルナル「…冗談じゃ…ないんですよ…っ…もっと…一緒に居てほしかった…今だって!本当は!生きて欲しい!生きて!3人で俺と!お母さんと姉さんで!!思い出を!!…………って…思ってたのに…っ…どうして!!!」



エルトラス「………ルナル。」



そっとお母さんの右手が俺の頬に優しく触れる。


ボロボロと涙をこぼしていた俺の涙を拭うように


優しく撫でる。



ルナル「…お母さん…っ」



エルトラス「ルナル…私は…幸せだった。」



ルナル「…逝くな」



エルトラス「…ルナルが生まれてきて…憎しみで…いっぱいだった私は溺れそうだった。けど…ルナルが私にお母さんって笑顔で駆け寄ってきた時…くすんだ世界が色づいて見えた。ツキノお嬢様に救われた時のようにね…。だから…私は…あなたと出会えて…嬉しかっ…た…っ…。」



ルナル「やめろ!それ以上…っ」



エルトラス「…ルナルは…きっと…もっと…素敵に…かっこよ…く…私の…自慢の……子………」



エルトラスの瞳は虚ろに



ルナル「お母さん!!!」



エルトラス「…るな…………る………お母さんに…選んで………くれて……………ありが……と…ぅ…………。愛して…る………………。」



エルトラス「…………………。」



エルトラス「……………。」



エルトラス「………。」



エルトラス・ムーンファクトは愛する息子ルナルの胸に抱かれながら幸せそうに眠った。



数年が立つと


俺は旧ムーンファクト家があった跡地にて


花束を持ち母エルトラス・ムーンファクトが眠る墓地へ花を置いた。



ルナル「お母さん…あれから数年、姉さんの情報を求めて捜索した結果…やっぱり姉さんの遺体は見つからない。行方知れずのままだ。…本当に生きているのかもわからない…」



ルナル「でも…可能性があるなら。俺は…」



その時だった。


俺だけにしか聞こえない声が聞こえたんだ。



キュキュ…キューーン…


機械的なノイズが俺の頭に流れ出す



ルナル「うっ…な、なんだ…この音は…」



頭の中に語りかけるようだ。



???「聞こえるかい!」



ルナル「だれだ!お前は!」


(声色からして忙しない…なんなんだ…)



???「今は話してる場合じゃない!頼むツキノを!ツキノを助けてやってくれ!」



ルナル「っ!? !?ツキノ…だと!?おい!お前!どうゆうことだ!説明しろ!」



???「だから!説明している暇は無い!いまからゲートをだす!そこに飛び込め!!!」



空間が歪みくろずんだ真っ黒な穴が目の前に出現する。



ルナル「なっ…」



???「頼む!時間がないんだ!」



ルナル「……っ!…くそっ!」



ふと…後ろを振り向くと


いるはずのない母の姿が見えた気がした。



エルトラス「…………。」



何も言わずただこちらを見ている様子だ。



ルナル「………わかったよ。お母さん。」



エルトラス「……………。」



俺は黒い穴に勢いよく飛び込む。



ルナル「お母さん。行ってきます。」



次元を越え、俺はその地にたどり着く。



ルナル「なんだ…ここは……。」



赤黒い大地


闇に染まりし曇天



ルナル「明らかに異常だ…。」


(いやでもわかる…この先。間違えなく死ぬかもしれない。)



ツキノ「はぁあああああああああああああ!!!」



ルナル「っ!?」


(この声は…まさか!?)



声のする方へ急いで向かう。



長い耳にスラッとした脚


薄紫の髪…。


凛とした顔立ち。



俺は姉さんを見つけた。


姉さんがなにかと戦っている。



ツキノ「ぐっ!?あっ…ぁあああああああああああああああああああ!!!」



ルナル「っ!?!!姉さん!!!」



気づいた時には体が動いていた。


俺は姉さんを縛る黒い何かを切り裂く。



ルナル「はああっ!!」


(模倣確定ライトニング…!!!)




脚に力を込め切り裂くイメージをこめて


蹴り落とす。



バチチチ!!!!



ブチブチ!!



爆風と共に姉さんが飛ばされ。


俺は姉さんをキャッチ。



ツキノ「ぅ…う…。」



ルナル「よかった…無事みたいだ……姉っ…」


(いや…。今はそんな状況じゃ…無いみたいだな。)



俺は姉さんを安全な場所に寝かせる。



ルナル「…いきなり知らんやつに呼ばれて訳わからんことに巻き込まれて散々すぎるが…家族にちょっかいかけた奴。…シメてくるとするか。」



ルナル「……………。」


(姉さんは生きていた。けど…。あの声の主がだれかはわからない。一体…どこにいるんだ…。)



【-完-】



次回【零却寺プロジェクト】-星の欠片集-




【記憶整理天魔シスターズ】

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コメント: 5
  • #1

    ルナル (土曜日, 25 5月 2024 23:21)

    全く…ふざけている。
    まさかこんな形で再開するなんて…
    姉さん…

  • #2

    エルトラス (土曜日, 25 5月 2024 23:22)

    ルナル…間違えてますよ…漢字。

  • #3

    ルナル (土曜日, 25 5月 2024 23:23)

    再会。
    これでいいかな?
    母さん。

  • #4

    エルトラス (土曜日, 25 5月 2024 23:24)

    ええ。
    大丈夫よ。

    ルナル…?
    お嬢様をよろしくお願いいたしますね。

  • #5

    ルナル (土曜日, 25 5月 2024 23:25)

    わかってる。

    ………行ってきます。
    母さん。