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【星の管理者】
いくつもの平行世界の干渉・観測・管理を目的とした役割。
僕の名前はファウスト。
この記憶は僕の前世の記憶の欠片
今の僕はもうこの過去の記憶が思い出せない
これを見ている観測者(読者)よ。
きっと君たちなら僕の真実に辿り着けるはずだ。
その目で僕の過去を見届けてくれ。
よろしく頼むよ。
【星の記憶】
僕の力は元々突発的だった。
僕も元々はある世界の人間だった。
僕の世界では天体観測が盛んな世界だった。
ある時か天体観測学者は言ったんだ
もうじきこの世界は終わってしまうと…。
それは宇宙から飛来した彗星だった。
彗星は僕の世界に衝突。
大規模な死者が出た。
その彗星から異星人が出てきた。
異星人は言葉もなく僕らの世界を侵略し始めた。
僕らは対抗した。
人類がもてる最大の知識。
人類が出せる最大の力。
人類がなせる最大の結束。
でも勝てなかった。
僕たちの世界は異星人に占拠され人口は8割が死んだ。
生存者はたった…2割という絶望。
終焉とはこの事らしい。
異星人の宇宙技術は僕らの遥か上だった。
勝てない。
誰か助けてくれ。
誰か…誰か…。
願いは届かない。
神様はいない。
母、メイルは言った。
メイル「明けない夜はないのよ」
父、ガイトは言った。
ガイト「人間ってのは諦めが悪いんだ。」
母さんと父さんは異星人と戦い続けた。
母さんと父さんの勇敢な意思は残っていた生存者たちを奮い立たせた。
それから十数年間…再び戦争の繰り返し、幾度となく挑み血を流し、無情に時は流れて行った。
しかし…人類は敗北。
異星人が闊歩することと成り果てたのだった。
人類は敗北した。
更に数年の月日が経った。
セイト「…父さん、母さん…仇とるからね…。」
僕は胸に拳を当て空を仰いだ。
満点の星空が広がる。
僕は不思議な力に目覚めていた。
でも…不思議だ。
この空はあの時の…
ー記憶の欠片ー
???「こんなに綺麗なのね。夜空というのは…」
彼女はキラキラと目を輝かせて
とても幸せそうに笑う。
???「そうだろ?ずっと見せてやりたかったんだ。???に。」
???「私に…?」
???「他に誰がいるんだよ?」
???「…ふふっ…変わった人。」
彼女の笑顔を守りたいと心から思った。
でも…それは叶わなかった。
プツリとそれは突然切れる。
セイト「…いっ!?」
ザザッ…
脳裏にノイズが入ったようだ。
少し頭痛がする。
それどころか…うっすらとだが…
有りもしない記憶が頭の中をぐるぐるする。
この記憶は…この力に関係あるのかもしれない。
わからない…。
でも…今は…目の前の敵を
異星人共を…。
セイト「滅ぼしてやる。」
敵(かたき)をとれるくらいに強くなったんだ。
勇敢で優しかった母さん
勇敢で強かった父さん
見てて…。
必ず奴らを…。
憎しみと怒りをのせ僕は異星人達が闊歩する
中心に足を動かす。
只では殺さない。
悲痛の叫びを。
悲痛の痛みを。
悲痛の慟哭を。
悲痛の後悔を。
悲痛の絶望を。
この力は…復讐すべきためにあるのだと。
僕は願う。
星に願う。
天から無数のきらめき。
やがてそれは
雨のように降り注ぐ。
セイト「殲滅しろ!!!!」
セイト「天ノ輝き」(あまのかがやき)
異性人に放たれたその一撃は
天から人の手を何千倍も大きくした隕石が降り注ぐ。
この世界にもう守るものがない。
この世界になんのかちもない。
ならばいっそ星ごと滅ぼすまで。
しかし、異星人の抵抗は激しく恐ろしいものだった。
雑魚どもは片付けることが出来た。
僕は異星人の女王と対峙する。
女王「…………。」
言葉はない。
会話などあり得ないと思っていた。
女王「………。」
(お前は我が同胞をなぜ殺した。)
セイト「……お前…脳に直接…!?」
女王「………。」
(お前は何者だ。)
セイト「テレパシーか…」
女王「…………。」
(私は同胞を殺され悲しんでいる。)
セイト「ふざけるな!貴様が先に戦争を始めたのだろう!!!どれだけ死んだと思っている!!!」
女王「…………。」
(それはこちらも同じこと)
セイト「…なんだと!」
女王「…………。」
(弱き者は強者により滅ぼされる。自然の摂理である。そしてまた…どんな者にも寿命が存在するのだ。)
セイト「…何を…言っている。」
女王には殺意が全く感じられなかった。
女王は静かにこちらを見ている。
女王「………。」
(…人の子よ。お前は特別な個体だ。)
セイト「………特別な…個体…だと?」
女王「………。」
(前世の記憶)
セイト「!?」
女王「……………。」
(お前にはやるべき使命があるだろう。)
セイト「…なにを…言っている。僕は…この地に産まれこの世界で育った!母、メイルと父、ガイトの元に産まれた!僕の名前はセイトだ!!」
女王「…………。」
(………思い出せないのも無理はない。だが…その力の影響で前世の記憶が共鳴しているのだ。)
セイト「…だったら…何だってんだよ!!僕は僕だ!!前世の記憶とか知らない!!僕はこの力でお前ら異星人を皆殺しにする!!ただ!それだけだ!!」
女王「…………。」
(なら…気が済むまで私にぶつけるがいい。ただし…今のお前は私に絶対に勝てない。)
セイト「そんなのは…やってみねぇとわかんねえだろうが!!!」
僕は浮遊する女王に襲いかかった。
女王との戦闘が開始する。
僕と女王は戦った。
戦い続けた。
大地という大地はなくもはや存在すらしていない。
宇宙空間を漂い
僕と女王は戦った。
凄まじい未知の力
僕の力はどこまでかまだわからない。
セイト「くそっ!」
女王「………………。」
(お前は十分に戦った。)
セイト「はぁ…はぁ…」
何度も何度も
攻撃を繰り返すが
女王の顔に傷一つすらつけられそうにない。
女王「…………。」
(…もういいだろう。…これ以上は無意味だ。今のお前では我は倒せない。殺せない。)
セイト「知るか!!!俺にはお前たちが殺した俺の大切な者たちの気持ちを背負って戦ってるんだ!どんなにお前が無敵でも…その無敵を超えたらいいだけだろうが!!!」
僕は星に願いをかけた。
自然と言葉が頭に浮かぶ。
チカチカと脳細胞が活性化するような感覚。
「流星ああああああああ!!!!!」(ステラ)
全方向から無数の輝きにと共に宇宙に散らばる惑星のかけらが女王に一斉に放たれる。
星の欠片たちは
女王の目の前で塵と化す。
女王「…………。」
(…我には敵わない。…諦めろ。)
セイト「ふざけるなああああああああ!!!」
星に願いをかけた。
星の欠片を集合させ巨大な剣を手に
女王目掛けて大きく振り上げる
女王「……………。」
それもまた受け流される。
パリィン!!
セイト「…っ…まだ…まだ…。僕の戦争は!嘆きは!!闘争は!!終わらない!終わらせるかああああああああ!!!」
ゴゴゴゴ…!!!
女王「………。」
(…それほどまでに。)
真っ暗な闇の中でも光輝く無数の輝き。
ただの輝きじゃない。これは怒りだ。怒りの炎だ。
憎め!狂え!燃えろ!ただただ目の前の女王(あいつ)を…殺すために!!!!
セイト「星々ノ憤怒流星!!!!!」(プリズマティック…バークコメット!!!!!!!)
無数の輝きはその声に呼応するように赤く赤く太陽のように輝き放たれる。
女王「…………っ。」
(…先ほどとは比べ物にならない…向上しているか…。)
ぴきっ…
女王「………!」
(………っ……。)
セイト「…あとすこし…ぐっ…っこふ………。」
自身の口から勢い良く吐血する。
女王「…………。」
(力の代償だ。器(お前)が小さすぎた。)
セイト「この力を…お前は…知っているのか…?」
女王「…………。」
(…元々は私の力だ。)
セイト「……なん…だと……。」
女王「………。」
(…それを知ってなお…戦うか?)
セイト「当たり…前だ…っ…」
女王「…………。」
(私はお前という存在に出会うために存在していたのかもしれない。)
セイト「何を…言ってやがる…。」
女王「…………。」
(1度きりだ。チャンスを与える。)
セイト「馬鹿にするのも大概にしろ…」
女王「…………。」
(2度も言わない。構えよ。人の子よ。)
セイト「………。」
女王「…………。」
(全身全霊をかけて最大の一撃を当ててみよ。それで私を傷付けることができれば…お前の勝ちだ。その時は好きにしたらいい。もしも私に傷をつけられなかったら…私の力を譲渡する。)
セイト「……何が狙いだ。」
女王「…………。」
(選択しなさい。人の子よ。)
セイト「……無視かよ……。」
女王「……………。」
セイト「…………わかった。」
女王「……………。」
(来なさい。人の子よ。)
セイト「これが…僕の全身全霊…」
星に願いをかけた
まばゆい光は
束になり集束する。
その形は一つの武器。
弓と矢へと変換される。
女王「……………。」
その輝きは太陽の如く全てを焼き尽くす煉󠄁獄の矢。
ギリギリと弓を引いてゆく。
セイト「うおおおおおおおっ!!!!」
(俺の存在全て持っていっても構わない…。だから…頼む。アイツを焼き尽くす一撃必殺を。)
女王は顔色一つ変えずにその場に立ち尽くす。
セイト「…っぐ…ぅ…!!?」
光の集束するが限界を迎えている。
意識がまるごと持ってかれそうだった。
最期の力を振り絞り自身の強い願いと呼応するように矢は更に光り輝く。
女王「……………。」
セイト「覚悟しろ!!!女王!!!これが…」
ぎりりり…
女王「………。」
ぎりりり……
セイト「僕の全身全霊!!!星屑の矢(スターダスト・アロー)!!!!!」
解き放たれた一撃は神速。
女王に向かって放たれた。
しかし…
何重にも張られたバリアの最後の一枚。
止められてしまう。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!!
セイト「……………。がっ……。」
全ての力を出し尽くしてしまった
セイトの体はもうとっくにボロボロだった。
ゆっくりと女王がセイトの身体に触れる。
ぱぁああっ!
その光に微かに見えた
自分の記憶に残る想いの欠片たち
走馬灯のようだ。
セイト「…………。」
女王「…………。」
(私の力を譲渡する。)
女王に復讐しきれぬまま負けてしまった。
やりきれぬまま両親の無念を僕は果たすことが出来なかった。
メイル「セイト」
ガイト「起きろセイト」
懐かしい声が聞こえる。
メイル「…この子ったらまだまだこういうだらしない所はあなたそっくりね。」
ガイト「俺は、シャキッとしてるぞ!お前が俺のことちゃんと見ていないだけだ!」
メイル「見てるから言えるんだけど?」
ガイト「んーー…そうなのか…?」
メイル「そーなの。」
ガイト「…そうか…。」
メイル「あなた?私達の役目はこの子を送り出す事でしょ?」
ガイト「…そうだったな。」
メイル「…この子には私達の命を背負わせすぎたのよ。」
ガイト「………。」
ガイトはセイトの身体に呼びかける
ガイト「セイト。起きるんだ。」
ゆっくりと目を開ける
セイト「…父さん…?」
メイル「セイト…。」
セイト「…母さん……?」
メイル「っ!」
がばっ!
メイルはセイトを優しく抱きしめる。
あたたかい。
すごく懐かしい。
日向ぼっこしてるような心地が良いあたたかさ。
包みこまれるようだ。
セイト「…母さん…ごめん…。仇…とれなくて…。」
メイル「…いいのよ…。あなたは十分に頑張ったわ。」
ガイト「セイト。お前をおいて先に死んじまって悪かった…。」
セイト「……仕方ないよ。父さんも母さんもあの世界のために戦ったんだ。僕にとって父さんも母さんも最高のヒーローだよ。」
ガイト「……セイト…。」
メイル「……ありがとう。セイト。」
それから僕の意識は少しずつ覚醒していく。
セイト「…この空間は一体どこなんだ?」
ガイト「この空間はお前の意識空間。俺達はセイトの記憶が生み出した存在なんだ。」
セイト「意識空間…」
メイル「…私達はあなたの意識を覚醒させるために存在するわ。」
セイト「…つまり…どうゆうことなんだ?」
メイル「…女王が言った事覚えてる?」
セイト「………?」
ガイト「お前には…俺達と出会う前の記憶。つまりは…前世の記憶が存在する。」
セイト「…前世の記憶……。」
メイル「そう。私達の役目はその記憶の開放。」
セイト「…開放ってどうするんだよ」
ガイト「…もうお前にはわかっているはずだ。」
セイト「なにを!………っ!?」
急に頭が割れるような痛みが僕を襲った。
ザザッ…
ザーーー…。
ノイズがかかるようにうるさい。
セイト「…うっ…ああああああああっ!!!?」
脳裏に過る記憶…。
セイト「…そうだ…僕は…俺は……。」
こことは違う世界で産まれた人間だった。
名前はファウ。
俺の産まれた所では厄神様という怖い神様を祀っていた。
僕は…その神様にすごく興味があった。
その神様を1度見たくて。
当時やんちゃだった俺は神様に会うべくあれやこれやと神様にたどり着く道を探り俺だけしか知らない神様にたどり着く道を見つけた。
神様はすごく綺麗な人だった。
思わず声をかけてしまう。
ファウ「あの!」
神様「………?」
神様は驚きもせず死んだような目をしていた。
空っぽだ。
何も…感じない瞳をしていた。
ファウ「君は神様なの?」
神様「………。」
神様は何も言葉を発しない。
ファウ「おなかすいてる?」
神様「…………。」
神様はずっと無口だった。
でも俺は…その後も大人たちが来ないのを見計らって何度も神様の所へ足を運んだ。
ファウ「ねえ?神様?外に出てみない?」
神様「……外……?」
それは俺が初めて聞いた神様の声だった。
凄く…弱々しくて…今にも壊れそうな声でぼそっと呟いた。
ファウ「うん!外だよ!外に出ると太陽があたたかくて気持ちがいいんだ!だから俺と外に行こ!」
俺は初めて聞けた神様の声に歓喜して
神様を勢いで外に連れ出そうとした。
しかし神様の瞳は空っぽのまま。
神様「……私は外には出られない……。」
その声には生気が感じられない。
全てを失ったような悲しい目。
ファウ「どうして…出られないの?」
神様「…私は…神様として…ここでお役目を…。」
ファウ「お役目ってなにするの?」
神様「…………。」
また…悲しい目をしている。
その目を見るたびに、俺は胸がギュッと何かに掴まれたように苦しかった。
なんとか…神様を笑顔にさせたい。
俺はめげずにゆっくりと時間をかけて何度も…何度も…。外に連れ出そうとする。
神様「…………。」
ファウ「……神様!今日こそは!」
神様「…………。」
ファウ「だめかぁ……じゃあ…今日はこれで遊ぼう!」
神様「……それ…なに?」
ファウ「これはな…」
諦めきれなかった。
神様に嫌われたくない。
でも…外にずっと出られない
ずっとこの景色。
たった1人で。
そんなの寂しいに決まってる。
神様には神様の道があるのだろう。
でも…俺にとっちゃそんなもん知らない。
神様「………ねぇ…なんでお前は私に…しないの?」
ファウ「…?何を?」
神様「…………。」
神様は不思議そうにこちらを見つめながらだんまりだ。
ファウ「それってさ…?お役目となにか関係があるのか?」
神様は少し目を開けて口を開いた。
神様「………変わったやつだ。」
少しだけ…
本当に少しだけだが
表情が柔らかくなった…と思う。
気のせいかもしれない。
でも…俺はこの気のせいをもう少し感じていたいと思えた。
いつからだろう。
俺は神様の本当の名前を知るほどの仲になっていた。
本当にゆっくりと時間をかけて、俺は神様…いや、逆月ヒメリとの思い出を作っていく。
ファウ「ほらっ!ヒメリ!あと少しだ!頑張れ!」
ヒメリ「…まってよ!ファウ…。」
ファウ「…よっ…と!」
ヒメリ「………あ、ありがとう。」
ファウ「ほら…見ろよ。」
ヒメリ「………え……。」
満天の夜空にいくつもの流れ星が流れていく。
まさに絶景だ。
その神秘的な光景に興奮を隠せなかった。
ファウ「な!?どうだ!すげぇだろ!親父が教えてくれたんだ!」
ヒメリ「ファウのお父様が…?」
ファウ「ああ!もしも気になるやつが出来たらここで見せてやるといい。ってな。」
ヒメリ「…気になる…やつ?」
ファウ「ぁ…あ…いや!深い意味は…無くて!」
ヒメリ「…ふふっ…わかってる」
この時のヒメリの表情は…きっと暗くて見えない
そう思っていた。
でも夜空の明るさは…実は結構明るかった。
いくつもの流星がキラキラと光っているからなのだろうか…それとも月明かりに照らされてだろうか…。
多分どっちも違う。
ヒメリ本来の美しさなんだろう。
ヒメリ「…こんなに綺麗なのね。夜空というのは…」
彼女はキラキラと目を輝かせて
とても幸せそうに笑う。
ファウ「そうだろ?ずっと見せてやりたかったんだ。ヒメリに。」
ヒメリ「私に…?」
ファウ「他に誰がいるんだよ。」
ヒメリ「…ふふっ…変わった人。」
ずっと見ていたかった。
ヒメリの笑顔。
凄く綺麗で可愛くて。
最初から俺は…君に惚れていたんだと思う。
ヒメリ「何か言いたそうにしてる…なに?」
ファウ「…いや…なんでもねぇよ。」
ヒメリ「…そ。…ねぇ?ファウ…?」
ファウ「…なんだ?」
ヒメリ「…ありがとう。」
ファウ「………何泣いてんだよ。」
ヒメリ「え?」
ヒメリは涙を流したことにも気がついていなかった様子だ。
俺は…ポケットに入っていたハンカチを取り出してヒメリに手渡す。
ファウ「…ほら。拭けよ」
ヒメリ「…意外と紳士なのね。」
ファウ「…ま、まぁな。」
(…親父に持っていくように言われていたなんて…格好つけねぇから言えねぇ。)
ヒメリ「…じゃあ…帰りもちゃんと送ってね。」
ファウ「まかせろ。」
この夜を最後にヒメリとは会えなくなってしまった。
俺の行動は村の人間たちに見られていたらしい。
厄神様を無断で外へと連れ出した事。
厄神様の役目を妨害した事。
掟破りの罪人として俺はその日捕らえられ、地下深くの牢獄に放り込まれた。
その後は地獄の拷問にかけられた後に処刑されるということになってしまった。
ファウ「ああああああっ!?」
背中を焼かれる
じゅぅぅ…
感じたことがない痛みが全身を駆け巡る。
痛い熱い痛い痛い痛い熱い!!!
ファウ「ぐあああああっ!?」
あまりの激痛で意識が飛んでしまう。
それから…どれくらいがたった…だろうか…。
何か…外が騒がしい…。
カチャカチャ…ガチャン!
牢屋の鍵が開く音がする。
アラキ「ファウ!…大丈夫か!」
真っ暗で何も見えないが…
声でわかる。
親父の声だった。
ファウ「…ぉ…やじ……。」
アラキ「……ひでぇ……くそが…っ……………してやる…」
ファウ「…ごめん…」
アラキ「………謝るな…。それよりも…追っ手が来る!ファウ!なんとか立ってくれ!!」
ファウ「…っ…ぅ…」
正直フラフラだがそんなの言っている暇はない。
すぐに応援の兵が来るだろう。
アラキ「よし!流石俺の子だ。…道は俺が作る。お前は走れ!」
ファウ「…ぁあ…」
俺は敵に遭遇しない間は親父に肩を貸してもらいながら移動を開始する。
その矢先に…
兵「おい!いたぞ!!」
兵「捕まえろ!!逃がすな!」
アラキ「……くそっ!」
(早く逃がしてやらねぇと…いや…きっとファウなら行ける。)
ファウ「……っ…。」
アラキ「…ファウ。行け…」
ファウ「…でも!親父!」
アラキ「…お前には…やるべき事あるんだろ。行けよ」
ファウ「…でも!!」
アラキ「うるせぇ!!!」
親父の怒声が響き渡る。
兵達がどんどん向かって来ている。
時間はもうなかった。
アラキ「…お前がこうしてる間、女がひでぇ目にあってるかもしれねぇ!ソレを救ってやれるのはお前だろうが!!!」
ファウ「……っ!?」
アラキ「…何が何でも生きてちゃんと気持ち伝えてこい。バカ息子。」
俺の親父は本当の親父じゃない。
でも…
アラキ「……お前。家来るか?」
無愛想で不器用で
でも…優しくて…
最高にかっこいい親父だ。
親父に背を向けて
ファウ「…………っ!」
俺は何も言わずひたすらに走り続けた。
目の奥が熱くて仕方なかった。
ボロボロとあふれる涙を振り切ってかけていく。
親父がその後どうなったのかわからない。
俺はヒメリの元に向かうのだった。
ファウ「待ってろ!!今!!行くからな!ヒメリ!」
背中の痛みがなんだ足がなんだ。
俺は…ヒメリに伝えたかったことをまだ言えてない。
もう…とっくにわかっていたはずなのに。
ヒメリ…無事でいてくれ!
神社へと続く道を急いで駆け上がる。
神社へと辿り着いた俺は急いでヒメリがいる部屋へ手をかけようとしたその時だった。
ヒメリ「…いや……。やめて……もぅ…許して…っ」
悲痛の声が聞こえた。
嫌な予感がしてたまらなかった。
意を決して俺は部屋に飛び込んだ。
バン!!!
ファウ「ヒメリ!!!」
そこで見た光景は想像を絶するものだった。
ヒメリを囲んで複数の村の幹部がヒメリを犯している。
ヒメリ「………ファ…ウ……見ないで…ぅっ…。」
酷いものだった。
男特有の液体があちこちに散らばり
ヒメリの華奢で綺麗な肌にも飛び散っている。
幹部の男「…お前か?掟に背き、厄神様と密会していた愚か者は…まぁ…ここで殺してやるけどな。ギャハハハ!」
男は武器を取りこちらに容赦なく向かってくる。
ファウ「……………。」
(ヒメリが泣いている…きっと俺のせいなんだ。俺がもっと早くヒメリの苦しみに気付くことができていれば…。)
幹部の男「死ね!!!この罪人が!!!」
武器を振り上げた。
きっと…俺は…ここで罰を受けなければ…ならないんだ。
ごめんな…ヒメリ。
記憶の欠片
アラキ「お前はそうやって諦めんのか?」
ファウ「……だって親父みたいに出来ねぇもん。」
アラキ「大丈夫だ。ファウならやれる。」
ファウ「……でも…」
アラキ「いつかお前にも本気になれる事が出来る。」
ファウ「本気になれる事…?」
アラキ「俺が今お前に技を教えてやってるのも本気で…お前に教えたいから教えてんだ。」
俺の頭をくしゃくしゃと撫でる親父。
ファウ「…役に立つの?」
アラキ「…好きな女を守ってやれる!」
ファウ「…へんなの。」
守る…。
俺には…何も。
ヒメリ「いやあああっ!!助けて!助けて!ファウ!…ファウッ!!」
ファウ「!?」
何が…切れてしまった。
プツリ…。
気が付いたときには男の首をつかんでいた。
アラキ「いいか?ファウ。これは護身術(殺人術)だ。」
頭の中で親父の声が甦る。
教わったあれを。
今ならわかるよ…親父…。
大切な人の為に使うことも出来るんだよな。
例えば…好きな女を守るためとかな。
瞬間身体は宙にひるがえり
男の1人の首の関節をねじ曲げた。
ゴキッゴキッ!
次々に男達は倒れていく。
全てが遅く見える。
親父が見ていた景色もこんなだったのかな…?
最後の一人。
幹部の男「ひっ…ぃ…や、やめろ!く、来るな!来るんじゃねぇよ!!」
ファウ「………。」
男は命乞いをしだしたが慈悲はあたえない。
俺はその男を殺した。
幹部の男「ぎゃあああああああ!!!」
ゴキッゴキッゴキッゴキッバキッ!!
ファウ「……はぁ……はぁ…。」
ヒメリがいる方へゆっくりと歩いていく。
ヒメリの前に立つと俺は彼女に上着を着せる。
そして膝をついて頭を床につけ謝罪する。
ヒメリ「……え…。」
ファウ「…ごめんな…。なにも…俺は…ヒメリのことわかってなかった!…もっと早く気づくべきだった!もっと…早く気が付いていれば…。こんな…っ…。」
言葉が。
後悔の言葉が。
溢れてやまない。
全然守れてなかった。
ヒメリ「……ぅうん…。ごめんね…私のせいで…。こんなに…傷だらけになって…。」
か細く消えそうな声で俺の言葉に反応する。
そのまま優しく俺を抱きしめてくれた。
ヒメリ「ごめんなさい…っ…ぅう…っ…」
ファウ「…っ!」
震えるヒメリの身体を強く抱きしめ
お互いに泣いた。
少し落ち着きを取り戻し、ヒメリを神社から連れ出した。
追っ手が来る気配がない。
まさか…親父1人で…。
いや…今は…逃げることに集中するんだ。
ヒメリをおぶりながらおぼつかない足でかけてゆく。
けれど…やっぱり…追っ手の気配がない。
本当に…親父1人で…。
そんな事を考えながら歩いていると洞窟に辿り着いた。
ファウ「はぁ…はぁっ…ここで今日は一夜を過ごそう。」
ヒメリ「…そう…わかった…。」
パチパチと木の枝が燃えていく
焚き火で暖をとっている。
燃える炎を見つめながら周りを警戒する。
ヒメリ「私もやるよ。」
ファウ「…大丈夫だ。ヒメリはゆっくり休めよ。」
ヒメリ「…ファウが頑張っているのに私だけだらけるなんて出来ない!」
ファウ「ちょっ!?」
ヒメリは強引に横によってきた。
ヒメリ「いいから!で!ファウはここ!」
ヒメリは自身の太ももをパンパンッと叩いた後強引流されてしまった。
これが俗にゆう膝枕。
ファウ「………。」
(……やわらけぇ…。)
ヒメリ「…どう…?」
ファウ「…どう…って…。柔らかい…かな。」
ヒメリ「……ファウって…ヘンタイ。」
ファウ「理不尽だ。」
その後ヒメリも俺もいつの間にか寝ていたようでハッと目が覚めたときには火も消えていてまるで昨日のことが無かったように空は晴れている。
どうやら…追っ手は来ていないようだった。
しかし気は抜けない。
奴らがもしもまた来た時にヒメリを守りきれるとも限らない。
あまりここへ長く滞在するのも良くない。
俺はヒメリを起こし山を超えることを目指した。
それから数日間歩いた。
けれど進んでも進んでも道が晴れることは無かった。
ファウ「…はぁ…はぁ…」
ヒメリ「…ファウ。今日はここで休みましょ?」
ファウ「…そうだな…。」
ヒメリ「…大丈夫?」
ファウ「大丈夫だ!ごめんな!心配かけて!」
ヒメリ「……大丈夫じゃない顔してる。」
ファウ「……。ごめん。」
ヒメリ「…あれから追っ手の気配も完全に消えてる…確かに妙だけど…。でも…ファウ。あなたは違う…すごいストレスを感じて身体がだめになってる。だからペース落とそ?ね?」
ファウ「……ヒメリ…。ありがとう。」
その日、せめて眠れる場所をなんとか見つけて二人抱き合って眠りについた。
この旅に終わりがあるのか
いつになればヒメリを安心させることが出来る。
そんなことばかりが頭を巡ってた。
翌朝、ヒメリが…いなくなってた。
俺は慌ててヒメリを探す。
ファウ「ヒメリ!…ヒメリぃーっ!!!」
ヒメリ「…あ、ファウ!!」
ヒメリの声がする方へ振り向く。
ヒメリがニコニコと手を振り手招きをしている。
ヒメリ「来て!」
ファウ「おい!まて!ヒメリ!!」
ヒメリに呼ばれるがままに向かうとそこには綺麗な川が流れている。
ヒメリ「これって…ファウが言ってた…川なんじゃないの?」
ファウ「…そうだ…。」
辺を見回すと人工物もいくつか存在する。
近くに…俺たちのいた村とは違う村があるかもしれない。
もしかしたら…ヒメリを少しでも安心させることが出来るかもしれない。
ヒメリ「……えと…。ファウ…ごめんなさい…。」
ファウ「……ほんとに心配したんだ。」
ヒメリ「……ごめんね…。」
ファウ「………。次からは起こしてくれよ。」
ヒメリ「…そうします…。」
人工物を頼りに近くを歩いていると…
老父「おや?お前さんたち…?見ない顔じゃな…?」
不思議そうな顔で俺たちをみるおじいさんがいた。
ファウ「俺達は旅人なんだよ。」
ヒメリ「………。」
(ぺこり)
老父「…そうじゃったか…。なら…うちに来るといい。」
老父について行くと残念ながら村ではなく老父が1人で住んでる家だった。
話を聞くと老父も俺達同様村の掟に背いた人だった。
何十年も…もうここに住んでいるという。
老父「正直の…ワシは今、嬉しいんじゃ。…ワシは村の掟に背いて村から逃げてきた。逃げ切れた時は嬉しかった。でも…ずっと1人だったんじゃ。」
ファウ「……。」
老父「お前さん達を見た時、数十年ぶりに人に会ってワシは思い知ったよ…。逃げ出さずに死んでしまえばよかったと。」
ファウ「…俺達は旅人でずっとここの所野宿ばかりだったんですよ。」
老父「…じゃったら!ここに泊まると良い!」
老父は先程の暗い表情から一変しにこやかに宿泊の提案をしてくれた。
ファウ「本当ですか!」
老父「ああ!もちろんじゃ!」
ファウ「ありがとうございます!」
ヒメリ「………。」
(ぺこり)
ガンジ「そうじゃ…自己紹介がまだじゃったな。ワシの名はガンジじゃ。よろしく頼むぞ。」
ファウ「俺はファウって言います。こっちはヒメリ。俺のツレです。」
ヒメリ「……は、…初め…まして……。」
ガンジ「…ヒメリさんは…恥ずかしがり屋じゃの。初々しくてめんこいのぉ…。」
ファウ「…可愛いんですよ。彼女。」
ガンジ「なんじゃ?やっぱりちちくりあっとんのかえ?お主ら…。」
ファウ「…まぁ…色々です。」
ガンジ「そうかそうか。よし…ならば今日は祝杯じゃ!待っておれよ!!」
ガンジさんは勢い良く家を飛び出していった。
ヒメリ「…ガンジさん…嬉しそうね。」
ファウ「そうだな。」
ヒメリ「私達も何か手伝えないかしら…。」
ファウ「それもそうだな。せっかく泊めてもらえるんだ。手伝うか。」
俺とヒメリはガンジさんを探しに家の外へ出ていく。
ファウ「ガンジさーん。」
ヒメリ「が、が、ガンジさー…ん…。」
まだまだヒメリは慣れてないみたいで恥ずかしそうだ。
ガンジ「なんじゃ?お主ら…ゆっくりしておけばよいのに。」
茂みからガンジさんが現れた。
ファウ「せっかく泊めてもらえるんでなにか手伝わせてください。」
ガンジ「うむ…じゃあ…。」
ガンジさんの指示で釣りをする。
教えてもらったスポットへ
俺たち二人は早速釣りを開始する。
ヒメリ「うわっ!すごい!みてみて!ファウ!いっぱい釣れたー!」
早くも初心者のヒメリに先を越されてしまう。
ファウ「なっ!?嘘だろ!?」
負けじと釣り糸を垂らし挑戦するが…
ヒメリ「また釣れたぁー!」
ファウ「え?」
その後も…
ヒメリ「うわっ!大きい!釣りって楽しいね!」
ファウ「…………。」
結果発表。
ヒメリ20匹
ファウ0匹
ファウ「…魚と打ち合わせでもしたのか?」
ヒメリ「してないよ。」
ガンジ「おーいお前さんたちー!どんな感じじゃぁー?」
ガンジさんと合流し家へと向かう。
家でガンジさんは俺たちが居ないうちに
色々と用意をしてくれていた。
俺達はお言葉に甘えて一緒に食卓を囲むのだった。
ファウ「…ということなんですよ。」
ガンジ「はっはっは!それはかっこつかなかったねぇ…。ドンマイじゃよ。」
ヒメリ「あ、あの…ガンジさん…ありがとう…ございます…。」
ガンジ「…ワシは何もしとらんよ。…感謝するのはこちらなのじゃ。ワシはお前さん達に出会えてよかった。」
ファウ「…ガンジさん…。」
ガンジ「これで思い残すこと無いわい。」
力が抜けたように眠ってしまった。
ガンジさん。
きっと疲れたのだろう。
俺達はガンジさんをベッドに運んで寝かせてあげた。
ガンジ「…………。」
ヒメリ「…いい寝顔。」
ファウ「…俺たちのことで気を使わせたんだよ。きっと。」
ヒメリ「…そうかな…凄くガンジさん…楽しかったんだと思う。私達と話をしているガンジさんイキイキしてたもん。」
ファウ「………そっか。それなら嬉しいな。」
ヒメリ「…ね?ファウ?」
ファウ「…ん?」
ヒメリ「えと…。いや…あの…。何でもないや。」
ファウ「なんだよ?」
ヒメリ「…なんでもない!はい!私達も寝よ!」
ファウ「………へいへい。」
ガンジさんが予め用意していた予備のベッドで俺達は眠りについた。
翌日の朝。
いい匂いがする。
魚を焼いてるような…。
匂いにつられて、部屋を出るとガンジさんが昨日俺たちが釣った魚を焚き火で焼いていた。
ガンジさん「おお。ファウ。おはよう。ちゃんと眠れたかの?」
ファウ「ええ。お陰様で。」
ガンジさんはホッとした様子で言葉を返した。
ガンジ「そうか…嬢ちゃんは?」
ファウ「まだ寝てますね。ぐっすりです。」
ガンジ「そうか…。」
焚き火を囲うように出来た石の椅子に腰を掛け暖を取る。
パチパチと枯れ木が焼かれくちていく音が心を落ち着かせる。
ガンジ「ほれ…。」
ガンジさんは焼けた魚を数本手渡す。
ファウ「ありがとうございます。」
他愛ない話をしつつ駄弁っているとヒメリがふらふらとやってきて俺の魚を横取りして食べやがった。
ファウ「あ!?それ俺の!」
ヒメリ「…むぐ…むぐ…おいひい…。」
ファウ「美味しいじゃねえだろ!俺の!」
ヒメリ「…うん…」
ファウ「………。」
(こいつ頭回ってねぇ!)
ガンジ「お前さん達はやっぱり面白いな。あっはっは。ほら…お水と追加の魚だ。たくさん食べな。」
ファウ「すみません…。」
ヒメリ「…ありがとう…ございます…。ムグムグ…。」
ファウ「喉つっかえんなよ?」
ヒメリ「……うん…。」
それからしばらくしてヒメリが完全に目覚めた後、ガンジさんに出ていくことを告げ旅立った。
ヒメリ「ガンジさん…寂しそうだったね…。」
ファウ「…仕方ねぇよ…これ以上あの場所に居たら敵が来た時に。ガンジさん巻き込んじまうかも知んねぇからな。」
ヒメリ「……でも…楽しかったね」
ファウ「…そうだな。」
ヒメリと手をつなぐ。
細くて綺麗な指。
少しだけ照れくさくなってしまう。
ファウ「あのさ…ヒメリ。」
ヒメリ「…なに?」
ファウ「…ヒメリに伝えたいことがあるんだけどさ。」
ヒメリ「うん…。」
ファウ「言うタイミングがなかなか見つからなくて言えなかったんだけど。」
ヒメリ「…うん。」
ファウ「…俺は…ヒメリが好きだ。」
ヒメリ「………え…っ…。」
ファウ「…だから…俺はヒメリのことが好きだ。」
俺はヒメリに告白する。
ヒメリは戸惑いながらも受け入れようとしたその時、幸せが死合わせになってしまう。
それは唐突で音もなく慈悲もなく。
叩き壊される。
スパンッ!
ファウ「…………っ…」
ここで
真っ赤に染まる。
思考が停止する。
記憶はここまでだ…。
しかし…あるはずのない記憶が流れ込んでくる。
セイト「う、ぅあああああああ!?!!」
尋常じゃ無いくらいの激しい頭痛と全身が焼かれるような苦しみが俺を襲った。
???
目の前で流れる血 大好きな彼
私は声がでなかった。
彼の声も笑顔もあの優しく温かい手の温もりも。
全部… 全部… 流れていく。
真っ赤に染まって…。
流れていく…。
なんで… なんで?
私の幸せじゃ足りないの?
私の大切な人でさえも奪っていくのね。
世界なんて… どうでもいい。
本物の「厄神」になってあげる。
世界を滅ぼす神様になってあげる。
もうなにも… なにも信じない… 私にはもう失うものなんて無いのだから。
よくも… よくも! …殺してやる……。
「「絶対に殺してやるからなぁ!!!」」
その日、私は一匹の獣になり世界を滅ぼした。
慟哭の叫びは絶えること無く。
その悲しみは誰にも届かない。
???「…してやる殺してやる…殺してやる殺してやる…こんな…理不尽な世界…壊して壊して全部全部…ふふふ…私が本物の…厄神になってやる…みんなみんな!もうどうでもいい!あっはっは!!」
ここで真っ黒に視界は薄れていった。
ファウ「……はぁ…はぁ…この…記憶は…。俺は…守れなかったのか…ヒメリを…。」
メイル「……セイト…?…いや…ファウさん。」
ファウ「母さん…。」
気がつけば意識空間に戻ってきていた。
ガイト「…彼女は…あの世界を滅ぼした後、その存在は粒子となり器となる特異点を探しもうすでに転移してしまった。」
ファウ「…ヒメリが…世界を…滅ぼした…?そんな…。」
メイル「見たはずよ…。彼女はファウさん。あなたが追っ手に殺された後…彼女のリミッターが外れ内に秘めた厄神の力を完全に覚醒させた。それによって彼女は人ならざるものへと変貌しその世界を滅ぼしてしまった。」
ファウ「…そんな……。」
メイル「彼女の意識は今も厄神の奥の奥に囚われている。」
ガイト「…セイト…お前は…彼女を救える…だいじょ…」
ザザッ…
メイル「…じかん…ぎれ…みたい…」
ファウ「母さん!父さん!」
ガイト「…いいか…忘れるな。彼女は…厄神は…黒上いぬこ…」
ザザッザザッザザッ…
ノイズ音が激しくなっていく。
メイル「……セイト………彼女を…救っ……て………。」
その言葉を最後に二人の意識が完全に消えた。
そして………。
多大な情報量に耐えきれなくなった
僕の身体はいくつかの断片的な記憶しか思い出せない。
曖昧な記憶が僕を動かす。
直感的に僕には使命があると断定し行動に出るのだった。
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Queen (土曜日, 25 5月 2024 23:28)
時は動き始めた。
零がⅠへと。
私は…もう存在しないが見守るとしよう。
この絶望の先を。
ファウスト (土曜日, 25 5月 2024 23:36)
「…いかがだったかな?観測者(読者)え?さっぱり意味がわからない?そりゃごもっともだ。僕が勝手に語っているだけだからね。ふんふん…。なるほど。…そこからどうやっていぬこさんや他の仲間にたどり着けたのか?って?…なんかね…直感だよ。身体がわかってるっていうやつだよ。さて…あまり長々と駄弁るのも…ネタバレや匂わせちゃいそうだし。これくらいにしておくとするよ。さて…次はどの欠片がでてくるのか。楽しみだね。」