永遠桜事件エピソード

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【零却寺プロジェクト】-星の欠片集-


【春夏秋冬MEMORIALSEASON】


世界にはそれぞれ時期が存在する。

各世界線では名称は様々。


いぬこ達が存在する世界では4つ。


【春期(しゅんき)】

どの種族にも一般的に過ごしやすい時期。

管理者【春】が管理する時期。

永遠桜の美しさを一目観ようとする観光する者達や花見と称して宴会で楽しむ者、その周辺に桜の木々や花々も歓喜の声をあげ咲き誇る。

普段は姿を現すことがない花蝶妖精達も祝福の輪舞曲を踊っている。


【夏期(かき)】

日差しが強くなり夜は蒸し暑くなる時期。

管理者【夏】が管理する時期。

各々が日差しをしのぐために日影を作ったり体温調整の為海に海水浴に向かうものもいたりする。夜は彷徨い霊が何故か結構湧く。恐らく肝試しする者がこの時期には多いからだろう。そんな夏期は祭りが大盛り上がり、多種多様の屋台がずらりと並び種族問わずなので好評。


【秋期(しうき)】

草木が彩り森から取れる食材が時期によって美味しくなる時期。

管理者【秋】が管理する時期。

紅葉や役目を終えた木々たちの落葉が道行く先に彩りを与え季節の変わり目を知る者、秋期ならではの旬な食材に舌鼓をうつ者、種族対抗での大会が開かれたりなどが観られる。


【冬期(とうき)】

気温が一気に下がり、彩りを見せた木々たちは姿を変え枯れ木となり降り積る白雪で辺りは銀世界へと姿を変える時期。

管理者【冬】が管理する時期。

活発化していた動物達は弱体化し、冬期を越す為に眠りに入るが真逆に魔物は活発化し狡猾化する。動物達にとっては厳しい時期となっている。冬期ならではの祭り事は積もった白雪を拳大に握り投げつけ合う祭り、またその白雪で芸術を造形する祭り事等も存在する。中でも冬期は夜の夜空に輝く星がとても綺麗だ。運が良ければアマノハゴロモという不思議な光景が見られたりする。



これはその1部の話。


【永遠桜大事件】開幕。


-永遠桜にて-


永遠桜。

この世界でとても大きな桜の木。

万年その姿は変わらず季節が変わっても桜は咲き続ける伝説の桜の木。

この桜の木を管理するものはこの世界の時期を管理する1人【春期】担当。その名は【春】という1人の女性だった。


春「はぁ…幾年たっても変わらないわね…」


呆れ顔で永遠桜に触れてくすりと笑みをこぼす春にいつものお手伝いさんがやってくる。


レン「春様。お久しぶりです」


春の前に立つと膝を付き春を慕うかのように話しかける者がいた。

花の精霊イバラ=レンだ。

彼女は花を愛して死んでしまった少女でその魂は花達と融合し生まれた存在。

大好きな花たちに囲まれ新たな存在へと誕生した彼女には【花を開花させる能力】がある。


春「レンちゃん。ひさしぶりね。この仕事には慣れたかしら?」


レン「それなりには…ですかね」


適当に挨拶を済ませた頃。

もう一人の来客が永遠桜に訪れた。

背は低くレンのような肌を見せる衣装をしていない真逆の者。

古の花の精霊ヤマブキ丸。

彼女はレンよりも前に生まれた存在。

口調が特徴的で「のじゃ」を語尾によく付けている。

彼女の能力は【種を生み出す能力】


ヤマブキ丸「今年も有象無象がぎょうさんおるのじゃ。」


少し呆れる様子で永遠桜を眺めるヤマブキ丸に春はからかうようにちょっかいをかける。


春「ヤマブキちゃんは今日もかわいいねぇ…」


ヤマブキ丸「からかうでないのじゃ。管理人。」


ヤマブキ丸は春に対して少しばかり冷たい態度で接していた。


春「よーしよし…よーしよし…」


ヤマブキ丸「おい」


春「わしゃわしゃ!」


ヤマブキ丸「お主?」


春「スリスリスリ!!」


ヤマブキ丸「…………。」


プチン!


どうやらヤマブキ丸の何かがキレたようで。

ヤマブキ丸は春にゴチンと頭突きをかますのだった。春の悲痛の叫びは天に召されるが如く儚く気絶し爆ぜた。


ヤマブキ丸「これでとうとうこの世界の春期が死んでしまったのじゃ…残念なのじゃ…」


ピクリともしない春を見ていたレンにヤマブキ丸は話を持ちかけようとした時、春はスッと立ち上がり近づいてきた。


春「ヤマブキちゃん…」


ヤマブキ丸「なんなのじゃ…てか近いのじゃ。アッチいけロリコン。」


春「仕事の話よ仕事!後!ロリコンじゃなくて!私は小さくてかわいい女の子で語尾に「のじゃ」つけてる女の子が好きなだけなの!」


ヤマブキ丸「お主わしのこと好きすぎなのじゃ。わしは嫌いのじゃ。」


レン「お仕事は…?」


ヤマブキ丸「レン。二人であやつ殺らねーかのじゃ?」


春「レンちゃん…私の方を選べば皆幸せよ?」


戸惑うレンに二人はジリジリと迫る。

二人の圧に圧倒され後退り。

気がつけば永遠桜が背後まで来てしまっていてもう逃げられない状態だった。


レン「私は!!」


レンが叫んだ途端。

二人の動きは止まっていた。

さっきとは全く違う表情。

ヤマブキ丸と春は何かを感じていた。


ヤマブキ丸「………感じたのじゃ?」


春「そうね。」


レン「何か…あったんですか?」


恐る恐る私は二人に聞くと顔を曇らせ私に告げた。


春「永遠桜の力が弱くなっている」


ヤマブキ丸「このままでは…春は死ぬ」


永遠桜はその名の通り姿を変えることなく咲き続ける。大きな桜の木だ。しかしその正体はこの世界の【龍脈】というエネルギーの発生地に咲いた桜の木で常時溢れ出す龍脈のエネルギーを吸って無限の寿命を得ているがいつしかエネルギーは桜の木と融合。

膨大なエネルギーを持った桜の木には自我がやどり自身が暴走しないように管理人と称した人格を生成した。それが…管理人である【春】だ。


レン「…そんな…。春様が…。」


春「……げて……。」


ヤマブキ丸はもう既にこの場の異変に気付いた。


ヤマブキ丸「レン…。春から今すぐ離れるのじゃ」


レン「…それって…どうゆう…」


レンの背後に迫る蠢く何かをヤマブキ丸は切り裂いた。永遠桜の木の枝が意思を持ってこちらに襲いかかろうとしている。

ヤマブキ丸はすぐさまレンを担ぎ上げその場から距離を取る。


レン「きゃあああ!」


ヤマブキ丸「ちっ…厄介な動きなのじゃ!」


ヤマブキ丸は迫りくる永遠桜の木々の触手に応戦するがレンを守りながらは厳しい戦いだ。


レン「ヤマブキ丸さん!」


ヤマブキ丸「…レン。すまぬが…この事を誰かに知らせるのじゃ!」


レン「……しかし!それではヤマブキ丸さんが!」


ヤマブキ丸「……レン。選ぶのじゃ!今までのように楽しい未来が続くのと!このまま得体のしれない奴らに支配され世界が壊されていくのと!!」


ヤマブキ丸は私を勢いよく安全な場所へと投げ飛ばした。投げ飛ばされた場所は全然痛みを感じない。ふわふわしていてクッションになっていた。


レン「ヤマブキ丸さん!!…必ず!!必ず!!助けます!!!」


レンその場から猛ダッシュでかけていく。

ヤマブキ丸はそれを背に安堵した。


ヤマブキ丸「…頼んだのじゃ…レン」


態勢を整え深呼吸。

キッと攻撃対象に目をやる


ヤマブキ丸「伊達に長生きしてないのじゃ…わし。ちょっくら本気でお主と殺し合いたいと思っていたのじゃ。…春。」


ヤマブキ丸と汚染永遠桜が戦闘。

助けを求めてレンはとにかく走り出す。

行く宛などわからない。

レンは声を大にして助けを求めた。

けれど反応がない。

何度もあきらめずに助けを求めるレン

反応は無かった。


レン「…どうして…。」


気がつけば永遠桜からはもうかなり離れていた。

かなり消耗していたせいか視界がボヤけてその場に倒れ込み意識を失った。

次に目が覚めた時、黒髪に獣の耳が視界に映る。

徐々に視界がクリアになる。


レン「……ここは…」


いぬこ「ここは私を家だよ。」


黒髪のケモミミをした女の子が心配そうにこちらを見てくる。


レン「………。」


いぬこ「貴方が倒れてたから家に運んでもらったの弟に。」


レン「…ありがとうございます。」


いぬこ「いえいえ。私は黒上いぬこ。」


いぬこから状況説明を簡単に聞くと少し気持ちを落ち着かせた後に自身の事情を説明した。


レン「…ということなんです。」


いぬこ「わかった。じゃあ私も協力するよ。」


レン「…いぬこさん…」


いぬこ「だってお花見が出来ないとか嫌だからね。」


いぬこはレンとの会話の後

仲間たちに話を急いで持ちかけ事の重大さを伝えた

いぬこ達一行は汚染永遠桜へと向かう道中、ただならぬ気配と殺気をその身にピリピリと感じる。


椿「おいおい。これ、囲まれてんぞ。俺達。」


鬼と人のハーフ鬼神椿は周囲を警戒し刀を引き抜き両手に構えたと同時に大きな尻尾と頭に王冠をつけお姫様のようなドレスを身につけた少女は何食わぬ顔で椿を静止させた。


リューコ「椿。大丈夫よ。もう無力化してる。」


レン「…うそ…凍ってる。」


リューコ「とっとと終わらせに行くわよ。」


リューコを先導に汚染永遠桜へと向かう道中、リューコに少しずつ異変が起きていく。


システィア「リューコさん!待ってください!」


システィアがリューコを引き止め

リューコはその場に静止する。


リューコ「なによ…どうしたって…」


システィア「……リューコさん…あの氷を通してずっとさっきからエネルギーを吸われてます。」


リューコ「…やっぱり…ね…。くっそ。むかつく…」


システィア「今すぐ氷の使用をやめてください。死んでしまいますよ。」


いぬお「システィア。リューコは俺がおぶってく。」


システィア「わかりました。」


息が少し荒く頭が回らなくなってきたのか…リューコはいぬおの背中で気絶し眠ってしまった。


椿「………。無茶しやがって。じゃあ…あとは俺が行く。一気に突破する。」


再び二刀流の構えをとると後に続くようにツキノとレンが椿と肩を並べる。


ツキノ「僕も前衛行きましょう。ボクも燃えてきました。」


レン「私もずっと後衛ではいられません。」


後衛はいぬこ、システィ、システィアが請け負うこととなった。

陣形を整え合図で走り抜ける。


レン「ほんとに言うんですか…?」


椿「掛け声があったほうが言いだろ。」


ツキノ「そうですね!気合い入りますし!むっふっふ!」


前衛組の指揮は上々。

レンが声を張り上げ叫ぶ。


レン「全軍!!突撃いいいいいいっ!!!!!」


全員が一丸となりものすごい勢いで駆けていく。

襲いかかる触手達を物ともせずあっという間に永遠桜に到達成功。

そこで待っていたのは変わり果てた永遠桜の姿と、ボロボロになったヤマブキ丸が倒れていた。

慌てて駆け寄るレンはヤマブキ丸を優しく抱える。


ヤマブキ丸「……れ…ん…。」


意識も息もなんとかある。


レン「ヤマブキ丸さん……ごめんなさい…。」


ヤマブキ丸「…よく頑張った…のじゃ…」


ボロボロになった小さな手でレンの頭を優しく撫でた後だった。


汚染春「なかなかいいおもちゃだったがここまでですね。」


レン「…お前が…こんなこと…。」


汚染春「これが永遠桜のエネルギーですか。無限の力無限の生命永久機関の完成体ですね。」


システィ「完成体ね…ふーん。なるほど…。」


いぬこ「まだその上じゃない限り。勝てるね。」


システィア「姉様…」


システィ「私の妹は究極体よ。」


自慢気に胸を張るシスティにシスティアは凄くはしゃいでいた。

それに応えるかのようにシスティアは自身の詠唱を唱え始める。


椿「おーまじか…それなら。」


ツキノ「ボク達はやること一つですねぇ!むっふっふふ!」


いぬこ達の指揮は劣らず汚染された永遠桜の道を切り開いていく。


レン「…すごい…」


ヤマブキ丸「…何者…なのじゃ…」


いぬお「皆とここで楽しく花見がしたいだけの連中だよ。…じゃあ…俺も暴れてくるかな。」


レン「リューコさんは…?」


いぬお「あんたに任せる。」


レン「……わかりました。春様を…よろしくお願いします。」


いぬおはニカッと笑うと戦場へかけていった。


システィ「みんな!!あと少しよ!!」


いぬこ「…っ!!はぁ!!火炎球(かえんきゅう)!!」


いぬこだけでは苦戦していた所にいぬおが駆けつける。


いぬお「姉貴ぃ!!」


いぬおが豪快に触手達を切り裂くと同時に細かくなった木々に火が通りやすくなり次々と触手の数を減らす。


いぬこ「ありがとういぬお。助かった。」


いぬお「俺達二人ならいけるって。」


二人息ぴったりに殲滅を再開させる。


椿「おらぁっ!!こりゃなかなか骨が折れる作業だぜ。いぬこたちの家の周辺の雑草刈りのがどれだけからくだったかなぁ!!」


二刀の刀を匠に操り鬼の血の力でぶった切っていく椿とテクニカルスターの能力をもつツキノは強烈な踵落としで触手を粉々にしたり、様々な属性の魔法を扱い触手の数を一掃していく。


ツキノ「むっふっふふ!!ほらほら!おそいですよぉ!!やぁ!!!」


残りわずか…

焦ってきた汚染春は全体を包み込むような数の触手でいぬこたちの動きを止めたかと思ったその時。


システィア「皆さん。お疲れ様でした。」


システィ「システィア!!まだそいつは融合しきってないわ!!」


システィア「流石です!姉様ぁ!ということで…」


システィアの武器から放たれる白き光は天に向けられる


汚染春「愚かな…どこに攻撃を…。」


システィア「悪者さん。死刑って知ってますか?死刑囚は殺される前に好きなことを一つさせてもらえるみたいなんです。ですけど…あなたには謝罪するボーナスタイムをプレゼントしてるわけですよ。」


汚染春「はぁ?」


システィア「あれ?わかりませんでしたか?謝らないと…」


汚染春「バカにしてんのかああああ!!」


レン「システィアさぁん!!!」


システィア「時間切れ。」


天から超強力な光線が永遠桜に直撃する。


汚染春「ぎゃああああああああ!!!」


永遠桜の姿がだんだんともとに戻りつつある。

まるで浄化だ。


魔物「くそがああああああ!!!こんなところで!死んでたまるかああ!」


システィ「今よ!!いぬこ!いぬお!」


貫通の強烈な浄化攻撃を敵にぶつけることで

恐らく取り憑いた魔物は逃走する。

死にたくないからだ。

そこで殺す。


いぬこ「いくよ!いぬお!」


いぬお「合わせるぜ!姉貴!!」


息ぴったりのコンビネーションが魔物に炸裂。

大元を無事に倒し。

永遠桜は元の姿へと戻っていった。

いぬこたちは勝利したのだった。

しかし、戦闘終了後。

ヤマブキ丸が死亡。

永遠桜が戻り管理人である春も意識を取り戻した。

永遠桜が汚染された爪痕は未だにのこっていて修繕作業に取り掛かっていた。

春様はヤマブキ丸が亡くなった後前ほどの元気は無かった。

イバラ=レンはヤマブキ丸から死に際に渡されていた最期の種をにぎりしめ春に手渡した。


レン「……春様……ヤマブキ丸さんからです。」


春は小さな種を受け取るとボロボロと涙をこぼし泣き崩れた。

自身がもっと注意していればと後悔した。

すると種が光だし。

それは見知った姿へと変化した。


ヤマブキ丸「………全く…。困ったものなのじゃ。」


レン「…え…っ!?」


春「…ヤマブキちゃん…」


ヤマブキ丸「わしの能力は種を生成する。記憶を引き継いだままの種を生成すればいいこと。」


春「でも!それじゃ…種だけ作るだけ…。あ。」


レン「……私の能力…花を開花させる能力。」


ヤマブキ丸「そうゆうことなのじゃ。」


全てを理解すると3人で抱きしめあった。

数日後、ヤマブキ丸の能力とイバラ=レンの活躍により以前よりも彩りよく永遠桜の周辺が賑わっている。

そこに…いぬこたちもやってきて仲良く皆で花見を楽しむのだった。


いぬこ「よかったね。レンちゃん」


レン「ありがとう。いぬこさん」


いぬこ「いぬこでいいよ。」


レン「え?」


いぬこ「私たち友達でしょ?」


レン「こうゆうのは初めてですからなんだか照れくさいですが…はい!よろしくお願いします。」


いぬこ「全然かたいよー。」


レン「えっ!?ぇえ」


いぬこにも新しい友達が出来たのだった。


【零却寺プロジェクト】-星の欠片集-

【春夏秋冬MEMORIALSEASON】

【#1永遠桜大事件】完


次回もお楽しみに