目覚めた時にはとある神社で寝っ転がっていた。
深い深い山奥で主を待てど現れず私は死んだ。
死んだはずなんだ。
幸か不幸か私はどうやら…再び違う形で生を受けたらしい。
「好都合だ。」
ハッと我に返る。
自身の身体を改めて見る。
獣の姿は無くかつて良く戯れた人間の手。
大嫌いな人間の姿になっていた。
心底不愉快だ。
しかし…ならばなおさら殺意が湧く。
このただならぬ怒りと憎しみを早くスッキリさせたいと想いはせていた。
辺りをキョロキョロと見渡し鳥居をくぐる。
いくつもの鳥居をくぐり抜けると小さな人里。
夜闇を照らすかすかな明かりがちらほらとチラついているではないか。
その光景を見てかぐぅ~っと腹の虫が高らかになる。
「お腹が空いた。じゃあ…食べに行くしか無いよな。」
私は怪しまれないように。
狩りをするように。
闇に溶け、影に這い。
その身は人里にたどり着く。
人間がすむ人里。
人間特有の臭いが私の嗅覚をくすぐった。
息が荒く、どうにも激しくなっていた。
とある一軒の家を襲撃しようと慎重に侵入する。
大人が2。
子供が1。
さぞ幸せそうな夢を見ているのだろう。
よだれを垂らし不細工な顔を晒しながら寝ている。
「はぁ……はぁ……。たまらない。」
気づかれないように一瞬にして3人の人間の首を飛ばす。
家に大量の血しぶきが飛び散る。
私は満面の笑みで喜んだ。
こんなにも人間を呆気なく殺せることに快感をおぼえる。
人間の肉を喰らい
私は少しずつ少しずつ自身の力に目覚め始めた。
それから数百年後の夜。
人里の人間は食い尽くしてしまった。
時には泳がせ繁栄させ絶やさないようにしていたが流石に飽きてきた。
寝床として世話になった神社に一礼。
最後の人間の肉を食べた後私は鳥居をくぐり呟く。
「さぁ…次の場所ではどれだけの人間(食料)に会えるのだろうな。…とても楽しみだ。それに…試したい力もできたしな。」
不気味な笑みを浮かべながら
私は夜を歩んでいく。
私は怪しまれぬように人に成りすまし人を試し人を殺す異様な存在になっていったのだった。
やがて私の存在は人間に恐怖を植え付けたようで後に私は謀りの神様と呼ばれ人々から恐れられていったのだった。
END
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