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私はお父さんもお母さんもいない…
戦争で死んじゃった。
今でも脳裏に焼き付いている
地獄の光景たくさんの命が断末魔をあげて消えていく。
私は足をくじいても靴がボロボロになっても逃げ続けた。
いろんな声が聞こえた
助けてと私に手を伸ばす人もいた
私は無視した。
止まれば死んでしまうからだ。
私は止まれなかった。
救えた命などなかった。
ハッとして目が覚めるといつもの宿屋の天井。
体を起こし身支度をして今日もバイトだ。
私がいるここはアガスティアという都市。
その昔…たくさん戦争していた。
私はその戦争の生き残り。
今ではもう戦争はなくなり平和な方だが…
ここも全部が全部おさまったわけじゃない。
王を巡ってはぎゃあぎゃあとほざく奴ら。
安全安全いいながら引き伸ばす奴ら。
違法行為を影で隠蔽する奴ら。
そんなの絶対に消えない。
この世界はとうに終わってる。
バイトは古本屋
ここが私の一番落ち着ける場所。
いままで色々してきたけれどお気に入り。
バイトをそつなくこなし、私は一人、ご飯を食べている。
すると…変な奴らに最近本当によく絡まれてしまう。
私はやめて!と声に出していうが勿論やめてくれませんでした。
通りかかった人に助けを求めようとしたけど…そうすればその人が不幸になる。
だから…私は…我慢して…我慢して…。
でも…。
限界だった。
ツヅリ「もう…お願いですから…やめてください。」
チンピラa「いやでーす?今日もヤらせろよ?なぁ?」
チンピラb「ほら…ここ…正直だぜ?けけっ…」
チンピラボス「おめぇら…何楽しんでんだよ?」
ツヅリ「……ひっ…」
チンピラボス「いい♀だなぁ…お前ら…黙っていたのか?この俺に…。」
チンピラのボスらしき人物はしたっぱの奴らを目の前で殴り倒しその場で殺害してしまった。
瞬間私は怖くて怖くてたまらなかった。
震える足を拳を振り上げ動けと叩き出した。
そしてその場から逃走する。
無論追いかけてくる。
私は暗く狭い路地裏のいりくんだ迷路のような道を必死で駆け抜けた。
逃げきることは出来た。
でも…気付けばしらないところに来てしまっていた。手元には何もないし…帰り道もわからない…。私は…全力で走ったせいか日差しのせいか…その場で力尽きて気を失い倒れ込んでしまった。
目が覚めるとなんだかあったかい…心地がいい…
懐かしい感覚だ…。
ゆっさゆっさ…誰かにおぶられてる…?
だれだろ…。
さっきの…チンピラ…???
にしては…華奢なからだ…
そう考えながら私は…また眠りに落ちた。
リンシェン「…めんどくせぇ」
俺は強いやつと戦いたかった
どれだけ倒してもなにしても勝っちまう。
つまらない。
数百年前アガスティアの【闘技場】で俺は絶対王者として君臨していたが面白くなくなった。
俺は馬鹿な貴族に付き合うつもりなんてないしその場から姿を消した。
それから俺はアガスティアを旅した。
そして今、何故かぶっ倒れていた女を抱えて宿屋で休ませている。
よく見ると、猫又族の女か。
まだ若いな。
俺はそんなことを思いながら眺めている。
そいつがゆっくりだが目を開けて恐る恐る俺の顔を見た。
ツヅリ「あの…貴方は…誰ですか…?」
猫又の女は怯えたようすでうかがった。
リンシェン「俺はリンシェン。たまたま俺があるいてたらお前が倒れていたんだ。けど…回りに人はいたのに誰もお前を助けようとしなかった。お前…なんかしたのか?」
ツヅリ「別に…なにもしてないですし…ここら辺ではよくあることですよ…。」
リンシェン「随分と優しくないなここら辺は。」
ツヅリ「とりあえず…ありがとうございました…見ず知らずの私なんか助けてくれて。」
リンシェン「助けたんじゃない。拾ったんだ。」
ツヅリ「拾った?」
リンシェン「ああ。拾ったんだ。」
ツヅリ「よくいってることがわからないんですが…?」
リンシェン「お前俺と来い。」
ツヅリ「いや…待ってください。どうしてそうなるんですか?」
リンシェン「お前はほっとけない。」
ツヅリ「どうゆうことですか?何が目的ですか?私はなにもで来ませんよ?それに今私は…」
私は言葉を言いかけた。
けどやめた。
この人はきっといい人。
それはなんとなくわかる。
でも…私がもしここでこの人に助けを求めてしまえば…この人に迷惑がかかる。
せっかく助けてくれた恩人にまた迷惑をかけることなんて私にはできない。
この思いは胸のうちに隠しておかないと。
ツヅリ「何もないです…私は貴方と行けないです。ごめんなさい。」
リンシェン「そうか。わかった。じゃ宿代は払っておいたから好きにしな。」
ツヅリ「ありがとうございました…」
その人は部屋を後に去っていった。
これでよかった…。
不幸になるのは私だけでいい。
その日の夜、結局バイトをほっぽりだして夜を過ごした。
バイトは…クビだろう…。
はぁ…やりきれないな…。
リンシェンさん…か。
フードで顔は隠れていたけれど…
女性だった。
せめてあの人にこれ以上不幸が起こりませんように…。
私は…眠りについた。
そして…早朝…。
小鳥のさえずりが聞こえてきて
なんとも清々しい朝を向かえた気がした。
とりあえず…戻る方法を聞いて回らないと荷物置きっぱだし…。
情報収集…めんどくさい…。
気持ちを切り替え私は宿を出た。
宿屋の主人に聞いたところ地図を優しく渡してくれた。
少し…気持ちが暖かくなる…。
地図のままに歩き始めスムーズに足が進んだ。
でも…昨日の出来事が脳裏にフラッシュバックする。
あのチンピラがいたら怖い…少しだけ遠回りしてバイト先に到着。
なんとかチンピラに会わずにずんだと安堵の
息。
私は本屋のドアノブに手をかけ
キィと鈍い音をたててドアを押して入る。
店長はおじいちゃんでいつも優しくしてくれる…だけどこればかりは…そんなことを思いながら…言葉を言いはなった。
ツヅリ「店長!ごめんなさい…私…昨日…。」
?「よぉ…昨日ぶりだなぁ…」
その声を聞いたとたん…
私の背筋は凍りついた。
目の前にいたのは血だらけになった店長だった。
いや…あの大男に…頭を鷲掴みにされて絶命している店長が目の前にいる。
ツヅリ「てん…ちょう……。」
どさりと…無惨に店長は倒れピクリとも動かない…。
大男「どうだ?最高だろ?これはお前が俺から逃げた結果だ。」
男は楽しそうにケラケラと笑い
私の胸ぐらを掴んだ
ツヅリ「…どうして…。」
?「簡単なことだ。お前が逃げたから。こいつ(店長)が死んだだけだ。よかったじゃねぇか…どうせ老いぼれ…すぐ死んでいく命。まぁ…最期は傑作だったなぁ…」
店長「死にたくない!やめてくれ!」
?「あの絶望的で気持ちがいい断末魔。最高に気持ちがよかった。礼を言おう。女。ふふふ…あっははははは!!」
ツヅリ「……。」
私の目から光が消えた。
あぁ…ごめんなさい……
ごめんなさい…
私が…私が…あの時逃げなければ…。
……。
大男「さぁ…今からお仕置きの時間だ。」
再び胸ぐらをグッと捕まれ…思い切り服を引き裂かれた。
私は…きっと…。
悪い子なんだ。
だから…罰を受けなきゃ…
私は…私のせいで死んじゃった…店長のためにも私が苦しまなきゃ…。
男の大きな手が私の震える身体を掴んだ時…涙がボロボロとこぼれだす。
男「おいおい…怖くなっちゃったかぁ?可愛いねぇ?でも…だぁめぇ…今からお前は俺の……っ…。」
男の動きが急に止まる。
それどころか…
男の全身から滝のように次々と汗がポタポタと床に落ちている。
?「へぇ…やっぱりか…」
コツコツと足音が近づいてくる…
男「体が…うごか…ないっ…なんだ…これは…」
?「あぁでも…お前は外れか…」
聞いたことがある…声。
私は忘れもしない…。
ツヅリ「リンシェン…さん…。」
リンシェン「おう。また会ったな。で…。状況からして…なるほど。」
リンシェンさんは辺りをキョロキョロと見て回る。
するとリンシェンさんは血だらけになった店長をそっと抱いた後もう一度。
床に寝かせた。
先程とは違い安心できるような寝かたをさせてボソボソと一人呟く。
リンシェン「…あんたの無念。俺が受け継ぐ。せめて安らかに眠れ。」
リンシェンさんは店長の流した涙をふいた後…ゆっくりと立ち上がる。
途端に伝わる圧倒的な死のオーラを放つ。
私に向けられたものではない…
わかる…感じとれたのは怒りだった。
大男「…ぁ…あ……っ…」
リンシェン「おい、お前…死ってどんな感じか…知ってるか?」
リンシェンは来ていたフードを私に手渡す
リンシェン「お前はこれ着てろ」
ツヅリ「…はい…。」
大男「きさ、まぁ!!…俺に何をしたぁ!!!」
大男は見にくい怒声をあげて抵抗した。
リンシェン「なに…キレてんの?あのさ?俺さ?今めちゃめちゃ機嫌は悪いんだわ?だからさ…お前…死んでくれよ。」
リンシェンはそう言い放つと男の腹に拳をトン…と当てた。
大男「ははっ!なんだ?馬鹿にしてんのか?」
リンシェン「いや…お前は力だすまでなく…もう死んでるからさ。単的にいうと。お前は雑魚だった。お前は今まで見てきたなかでも雑魚だったということだ。いいか?今から5秒やるから今のうちに懺悔するんだな。」
大男「へ…はったりだな。」
リンシェン「じゃあ…身をもって体験してね。さようなら。クソガキ。」
つぎの瞬間男のお腹が膨らみ破裂する。
大男「…………。」
人体が破裂する音。
飛び散る真っ赤な血しぶき。
男は血反吐を撒き散らし絶命した。
ツヅリ「…………。」
あり得ない光景を目の当たりにした後…私も視界がぼやけて再び倒れた。
リンシェン「……あぁ…またか…。…めんどくせぇ!」
つぎに目が覚めた私は
知らない天井。
ツヅリ「…ん…ここは…。」
リンシェン「起きたか。」
ツヅリ「リンシェン…さん…。」
リンシェン「リンシェンでいい。」
ツヅリ「…あの後…どうしたんですか…?」
リンシェン「色々したさ。めんどくさかったかが…店長だっけ?あのじいさん。」
ツヅリ「…はい…。」
リンシェン「…間に合わなかった。」
リンシェンは申し訳なさそうに私に伝えてくれた。
ツヅリ「…大丈夫…です…。」
リンシェン「……。大丈夫じゃねえだろ。…胸なら貸してやるから泣け。」
リンシェンさんは私を優しく抱き締めてくれた。
私は殺していた感情が溢れ出すようにひたすらに泣き続けた。
リンシェンさんは優しく本当に優しく私が泣き止むまでずっと抱き締めてくれた。
リンシェン「よくがんばったな。お前はすげぇよ。」
ツヅリ 「…あの時逃げなければ…店長は…死ななかったのに…私の…私のせいで!!」
リンシェン「あのじいさん…実は俺も知り合い…だったんだ。」
ツヅリ「あのじいさん…言ってたぞ。きっと…お前のことだったんだろうな。」
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店長「お前さん…リンシェンかい?」
リンシェン「爺さん、俺を知ってんのかよ…。何もんだ…?」
店長「ここは本屋じゃぞ。お前さんが本物であることは一目瞭然じゃ…。」
リンシェン「…なるほどな…。俺を記事にした本があったんだな。記事かいたやつ殺す。」
店長「ふぉっふぉ…そやつももう死んどるじゃろうて…。」
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リンシェン「爺さんとはそれから仲良くなってな。俺は俺の目的のために情報を集めるために通ってたんだ。」
ツヅリ「……そうだったんですね。」
リンシェン「爺さんお前の事凄く心配してた。」
ツヅリ「私を…?」
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店長「リン。」
リンシェン「んだよ。じじい。」
店長「相変わらずじゃの…お主もババアじゃろ。」
リンシェン「そうだなー。んで?なに?」
店長「…ワシは独り身でな」
リンシェン「おん。見りゃわかる。」
店長「んじゃと!!?」
リンシェン「本題はいれよ」
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店長「ということなんじゃ…儂はどうしたらいいかの…」
リンシェン「…まぁ…側にいてやること。きっとそいつも爺さんといられて幸せだと俺は思うぜ?」
店長「殺戮マシーンとは思えない言葉じゃの」
リンシェン「うるせぇじじい」
店長「ありがとう。リン。」
リンシェン「あいよー。そいつ名前は?」
店長「気になるのか?」
リンシェン「聞くだけ聞いただけだ興味もねぇよ。」
店長「なら教えんでいいじゃろ?」
リンシェン「あーはいはいわかった興味あるからおしえろじじい。」
店長「すなおじゃないのぉ…名前は…」
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リンシェンさんは語り終えると
下を向く私に質問してきた。
リンシェン「お前がツヅリだろ?」
ツヅリ「……。はい…。」
リンシェン「よっしゃ…ビンゴ!」
ツヅリ「……。」
リンシェン「まぁ…ここで言うのもなんだが…」
ツヅリ「…はい…。」
リンシェン「俺と来ねぇか?」
ニカッと笑いかけるその表情に私は忘れていた感情が蘇るようだった。
時間は音をたてて進み出す。
リンシェンと出会って運命が動いた瞬間だった。
「………はい。」
「よっしゃ!じゃあ飯食いに行くぞー!」
リンシェンさんは私の手を引いて夜の街中歩き出す。
夜に出歩いたのはいつ頃だろう。
今までは夜に出歩けば必ず嫌なことが起きるからとさせていた。
けど、今は違って見える。
きらびやかと光るお店や街頭がイルミネーションの様に綺麗で私の心は興奮していた。
そんな私に気がついたのかリンシェンさんも満面の笑みで答えた。
「楽しいな!ツヅリ!」
正直反則級だ。
こんなの笑うしかない。
本当に今の今までが嘘のようで。
私はこの時間が幸せに感じた。
「はい!リンシェンさん!」
「さんはいらねぇよ!リンシェン!」
「あ、えと…リンちゃん!」
「ちゃん?俺、こう見えて…かなりババアだぞ?」
「そうなんですか?気にしないでいいと思いますよ?」
「いや…まぁそうなんだけど…りんちゃんってのは初めて呼ばれたからさ。照れくせぇんだよ。」
「私は好きなのでこれからはりんちゃんって呼びますね?」
くすくすと笑みが自然にこぼれるツヅリ。
その様子を見てリンシェンは安心したような表情で言い返す。
「勝手しやがれ。」
その後リンシェンのおすすめの場所。
【美味しい料理屋ウマイン】
「こんな場所…あったんですね…全然知らない…。」
「知らないか?ちょうどよかったぜ。」
店の中に入るといかにもVIPだけが入れる場所のようだ。
目をキラキラさせているとリンシェンが手招きをしてツヅリを呼び寄せる。
広い木製のテーブルと長椅子。
店のスタッフが丁寧に案内してくれた後席に付いた私は何もかもが新鮮だったのでキョロキョロしてしまう。
「ほら、好きなの頼んでくれ。奢りだ。」
「いや!この前からもらいっぱなしじゃ無いですか!流石に払いますよ!」
リンシェンはメニューを見せると金額の方に指を差すとツヅリは言葉を失う。
とてもじゃないがめちゃくちゃ高い。
支払える額じゃない。
「払えるのか?ツヅリ?」
「な、なんでこんなにも高い場所!連れてきちゃったんですか!?」
思わずツヅリも大声でツッコんでしまう。
「ツヅリ。落ち着けよ。ちゃんと理由があるんだよ。」
「理由…?」
話によればリンシェンはここの食材の食用モンスターや高難度モンスターを狩り店に提供する代わりにただでご飯が食べられるということらしい。
改めてこの人、何者だと思った瞬間だった。
とはいえ…そうゆうことなら頂こうと決意したツヅリは適当にメニューを注文。
スタッフがたくさんの料理を私達のテーブルに置いていく。
肉、魚、野菜様々な種類の料理が並べられている。
全部美味しそうだが野菜系はやめておこう。
単純に苦手だった。
「苦手なやつあったらごめんな。」
「いや…私は良くしてもらってばかりだし…本来なら何も言えないんだけどごめんなさい…。野菜はネギとかはだめだから…それだけは…」
「あー。それなら大丈夫だ。店長にさっき言っておいたから猫叉族が苦手とするものは全部抜いてある。全部食べられるぞ?一応だが。」
紳士過ぎる。
この女紳士過ぎるでしょ。
意味わからん。
ツヅリは残さず食べた。
「あー…もう…入りません…産まれそうです。」
あっはははとリンシェンがその言葉に爆笑する。
私ももらい笑いしてしまう。
とても幸せな時間だ。
「店長!」
リンシェンが店長を呼ぶと何やら話をしているがツヅリは満足したのか急速な眠気に襲われる。
寝てはいけないと思っていても幸福感が頂点に達していた私はその場でリンシェンに寄りかかり寝てしまった。
「じゃあそれで…って…ん?」
「……………すぅ…」
「いつも悪いな店長。」
「構わないぞ。しかし…珍しいな。お前に連れがいたとは。」
リンシェンはニヤッと嬉しそう
「その子とどういう関係だぁ?」
「彼女!」
「お前女だろうが。」
店長は呆れた顔で去っていく
「後はやっとくから早くその子やすませてやんなよー?」
軽く手を振る店長に手を振り返す
ツヅリを背負って店を出た後の夜空を見上げた。
「これからはこの夜空を見上げるのも一人じゃねぇのか。楽しくなりそうだぜ。」
END
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