『創作愛故に…』
「姉貴ー?遊びに来た……ぞ??」
俺は部屋の整理を済ませ姉貴のいる部屋へと向かい襖をすーっと開ける。
しかし、そこにいたのは不機嫌なシスティとあの館長が対面し今にも一触触発しそうな雰囲気だ。
放って置くことも出来ず俺は割って入る。
「システィ?姉貴は?」
むすっとした表情を浮かばせながら答える
「いぬこならシスティアと何処かに行ってしまったわ。」
「そうか…。それで?今これ何してんの?」
「見てわからないの?話ししてるのよ。」
無論そんなことはわかっている。
だから割って入ったのだ。
「先程の謝罪をしに来たんだ。ツキノさんにね。」
「謝罪ですか。あのときじゃあなんでスッと謝らなかったんですか?」
システィが食い気味になり意見を求めた。
すると桔梗院は少し頬を赤らめはボソボソとつぶやく。
「いや…ついあの時、ツキノさんが王子様みたいで興奮してしまって勢いのあまり…。」
意外な回答に口をぽかんと開けるいぬお達。
「それがどうしてキスまでにいっちゃったんですか?」
「何と言うか…資料の一つとして感じてみたかった…というか…。」
「資料…?」
すると桔梗院は一冊の薄い本をシスティに手渡した。
本のタイトルには【月夜にさらわれてR18】と記されている。
興味本位で中を確認するてま私達の脳は情報処理が追いつかなくなってショートする。
底に描かれていた者はかっこいいオスとかわいいオス同士のまぐあいが艶かしく描かれていた。
「…………。」
顔を真赤した私達2人に対して桔梗院は真顔だ。
それどころか真っ赤になる私達を見て瞳の奥でニヤニヤとしている。
それを感じたシスティは悔しかったのか桔梗院の本をしっかり読んだ。
「桔梗院さん。」
「んー?どうしたのかな?」
私はこの時気がついた。
せっかくのいい話なのに、キスシーンがイマイチになっていることに。
「キスシーンがイマイチ…パッとしないように感じました。」
「うん。システィさんの言う通り。最後の大事な締め…ここの表現がどうも上手く描けなくて。実際に私は禍音にも資料としてキスをしたんだけどなんかちがくて…。」
以前の資料用として禍音さんも犠牲になっていたことに私は衝撃を受けた。
「……なるほど。」
「禍音さんも難儀だな…。」
「ツキノさんにキスしたのは単純にキュンと来たからで私自身が創作キャラの気持ち、感覚を知りたかったがためにしてしまったんだ。…すまなかった。」
自身の描く作品に熱心すぎたが故の巻き込み事故。
状況を理解し先程の怒りは落ち着き、頭を下げる桔梗院に対してシスティも謝罪する。
その後、ツキノが目を覚まし桔梗院に事情を説明されると苦笑いをしながら「大丈夫ですよ」と笑って返すのだった。
「…………すき。」(きゅん)
「あはは……ありがとうございますです?」
「あははじゃないわよ!あんたこいつにき、き、キスされたのよ!?」
システィは声を荒げてツキノに言い張るがツキノは冷静に言葉を返す。
「命を取られたわけじゃないので大丈夫ですよ。システィ。……まぁ…ボクだって恥じらいが無いわけでは無いですよ。」
少しキスの感触を思い出してしまい赤面するツキノに周囲はドギマギしてしまう。
普段あれだけはしゃぎ散らかすツキノがこうも態度をかえると普段とのギャップがあり衝撃波のようにそれが体を心を突き抜ける。
「…………。」
皆が沈黙する中でツキノはケロリと何事も無かったかのように表情を切り替えいぬこたちの事を尋ねた。
「あれ?どうかしましたか?皆さん?…ところで…いぬこさん達はどこに行ったんです???」
なにはともあれ、誤解は溶け明日からのバイトはなんとかやっていけそうと感じたシスティ達。
改めて、いぬこたちの元へと向かった。
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