【秋野大図書館】#6

『終戦する玉遊び』


対峙する二人の視線はやる気に満ち溢れていた。

火花を散らしシスティアからサーブを打つ。

うまく打ち返す禍音。

激しい攻防を繰り広げていく中、いぬお達がついにやってきた。

立ち止まる一同は何が起きているのか、どうゆう状況なのか全く飲み込めていない。

そこへいぬこは駆け寄り理由を説明。


「悪いですけど!いい加減負けてください!」


勢い良くシスティアの玉は弾かれ、素早く禍音に返していく。


「これは…八つ当たりです!そっちこそ!しつこいです!!」


スパァン!!


「この私が…負けるなんて…」


どうやら勝負がついたようだ。

勝利したのはシスティアだ。

システィアは雄叫びを上げガッツポーズ。

システィの姿を見かけると飛びつくように抱きついた。


「勝ちました!姉様!」


ご機嫌なシスティはやれやれとしながらもシスティアの頭を撫でてあげていた。

一方で女性姿の禍音はその場で倒れていた。

そこに駆け寄ったのは桔梗院だ。


「盛大に負けたわね。禍音。」


「ああ。負けました。八つ当たりで負けました。」


「悔しい?」


ニタニタと嘲笑うような笑みをこぼしながら桔梗院はメガネを見ていた。


「なんですか?その顔。むかつくんですが?」


「ざまぁ無いわね。」


ぷちんっと小さく何かが禍音の中でキレたそうでゴチンと一発桔梗院に頭突きで成敗する。

桔梗院の悲痛な悲鳴と共に卓球バトルは幕を下ろし、

大浴場にてそれぞれが疲れを癒している。


「はぁー…お風呂が広いってなんだかすごいね!」


いぬこは辺りをキョロキョロと興味津々の様子。


「ちょっといぬこ!こんな所ではしゃいじゃだめよ!滑るかrっ!?」


「おっ…と。お前もなリューコ。」


リューコがいぬこに注意しようとした矢先に滑りかけてしまうが運良く椿が近くにいたため転ばずに済んでいた。


「少し油断しただけよ。ありがとう。」


「おーこれは確かに広いですね。……でも…なんだか懐かしく感じますね。」


ツキノは大浴場を見て昔の記憶を辿っていた。

少し悲しげな表情で。


「ツキノどうしたのよ。そんな浮かない顔して?」


「おいおい!淫乱兎もうのぼせちまったのか?」


システィは心配そうにツキノを気に掛けるシスティの横にくっつき虫のごとく腕組みをして歩くシスティアは嫌味たらたらと口にする。


「いや…昔を少し思い出しまして…。」


思いの外暗い表情を見せたツキノをみたシスティアは何だか罪悪感に襲われ嫌に感じたのでシスティと組んでいた腕を離し離脱しようとする。


「別に気にしてないですよ。それよりも一緒にゆっくりとこの湯に浸かりませんか?」


ツキノは二人にニカッと笑いながら場の雰囲気を変えるように誘った。


「……すみませんでした。ツキノ…さん。」


「はい?」


「少々口が過ぎました。ごめんなさい。」


「なんのことかボクにはわかりませんが…いいですよ」


「……ありがとうございます…。」


「………ふぅ…。」


システィは二人の会話を静かに見守りながら聞いていたが内心ホッとするように息を吐いていた。


一方でいぬこは桔梗院と一緒にいた。


「今日はいきなりあんな事になってごめんなさい。」


桔梗院が申し訳無さそうにいぬこに頭を下げている。

それに対していぬこは冷静に言葉を切り返す。


「それは…私じゃなくてツキノに言う事なので。私は大丈夫ですよ。」


「…そうだね…。しかしながら私は君達を雇う側として謝罪しているんだ。…すまなかった。」


「……わかりましたから、頭を上げてください。きっと大丈夫ですよ。次気をつけたらいいです。」


「……わかったよ。ありがとういぬこさん。」


後に合流してきたリューコ達とも交流を深めたのだった。そして次の日、初バイトがついに始まった。